アムトラック(Amtrak)は、今年初めに2035年を目標に路線網を大幅に拡大する計画「コネクトUS(Connects US)」を打ち出しました。計画の中で特に注目すべき点は、アトランタ、ヒューストン、フェニックス、デンバーなど、近年急速に発展している都市圏をハブとする新たなインターシティ(都市間連絡)列車を設定することが挙げられていることです。これまでアムトラックのインターシティ列車は、人口密集地域であるニューヨーク周辺の北東回廊(Northest Corridor)、シカゴ周辺の中西部、西海岸の大都市を中心に設定されてきました。今回は、コネクトUSのうちアトランタ〜シャーロット間のインターシティ列車計画について見ていきます。

アムトラックのコネクトUSについてはこちらから。

南東回廊(Southeastern Corridor)の計画ルートマップ
Image: Amtrak

アトランタ、シャーロットの両都市圏は、近年人口増加が急速に進んでいるアメリカの都市圏の一つです。しかしながら、2021年現在、アトランタ〜シャーロット間を運行しているアムトラック列車は、ニューヨーク〜ニューオーリンズ間を1日1往復運行している長距離列車「クレセント(Crescent)」のみとなっています。コネクトUSでは、今後の人口増加によって需要が高まると予想されるアトランタ〜シャーロットを結ぶインターシティ列車の設定を計画しています。

アトランタ〜シャーロット間の移動手段
移動方法運行会社運行頻度最短所要時間*
自動車
(I-85経由)
3時間45分
高速バスグレイハウンド
(Greyhound)
5往復4時間15分
高速バスパンダNYバス
(PandaNY Bus)
4往復3時間45分
高速バスフリックスバス
(FlixBus US)
2往復4時間35分
高速バスワンダコーチ
(Wanda Coach)
2往復4時間00分
高速バスメガバス
(Megabus)
1往復4時間45分
鉄道アムトラック
(Amtrak)
1往復
5時間37分
航空機アメリカン航空
(American Airlines)
10往復1時間10分
航空機デルタ航空
(Delta)
8往復1時間7分
*交通渋滞による遅延、空港および駅までの所要時間は含みません。

現状におけるアトランタ・シャーロット間の移動方法は、所要時間の短い順に航空機、自動車、高速バス、鉄道となっています。ただし、空港や駅までの移動時間や待ち時間は含まないため、実質的に自動車が最も早く、両都市間の移動シェアは自動車に軍配が上がります。実際、両都市間のフライトは1日18往復程度の運行で、機材も100〜150人乗り程度の小型機が使用されています。

所要時間
Image: Amtrak

上の表はアトランタを中心としたインターシティ列車の想定所要時間です。アトランタ〜シャーロット間の想定所要時間は5時間となっています。現在アムトラックが運行するクレッセント号は、同区間を5時間37分〜48分で走行しているので、30分程度の時間短縮を想定しているようです。

運行本数
Image: Amtrak
Image: Amtrak

アトランタ〜シャーロット間は1日3往復(現行のクレセントを含む)となっています。また、列車運行には公的資金援助があることが前提となっています。言い換えると赤字を前提にした運行ということになります。

使用車両

アムトラックの走行するアトランタ〜シャーロット間は非電化区間となっています。そのため、使用される車両はクレセントと同じようにディーゼル機関車で客車を牽引する方式か、電気式ディーゼル両用車両を新たに導入するかのいずれかになると思われます。電気式ディーゼル両用車両の場合は、2024年から導入が予定されているシーメンス製の車両が投入される可能性が考えられます。

アムトラックが導入予定のシーメンス製車両についてはこちらから。

高速鉄道の可能性

アトランタ〜シャーロット間には、アムトラックのインターシティ列車計画とは別にアメリカ合衆国運輸省(United States Department of Transportation)が検討している11の高速鉄道計画の一つ、SEHSR回廊(Southeast High Speed Rail Corridor: SEHSR Corridor)とよばれる高速鉄道計画もあります。SEHSR回廊には、ワシントンD.C.〜リッチモンド(Richmond)〜ローリー (Raleigh)〜シャーロット〜アトランタなどの都市が計画に含まれています。そのうち、アトランタ〜シャーロット間については、FRA(Federal Railroad Administration)とGDOP(Georgia Department of Transportation)が第一段階の環境影響評価(Tier 1 EIS)を行い、2021年6月にその評価書を公表しています。

Image: GDOT

それによると、アトランタ〜シャーロット間のルートについて最終的に3つのルートに絞って詳細を検討した結果、最も経済効果の高いとされるグリーンフィールド(Greenfield)ルートが望ましいとされています。この場合、最高時速200〜350km程度(非電化か電化によって異なる)での運行が可能となり、両都市間を2時間6分〜2時間44分で結ぶことが可能としています。

Image: GDOP

上の表にあるとおり資本コストについては、グリーンフィールドルートが62〜84億ドル(6,200〜8,400億円)と予想されており、南東クレセントルート(現状のアムトラックルート)を改良する場合と比較して3倍以上の資本コストがかかることになります。しかし、速達効果が全く見込めない南東クレセントルートと比較して5倍以上の利用者が見込まれています。2050年時点での予測では、グリーンフィールドルートは利益が見込まれるのに対して、南東クレセントルートは運行保守管理費が収益を上回っており、赤字予測となっています。

まとめ

アムトラックが計画しているアトランタ〜シャーロット間のインターシティ列車は、今後も成長が見込まれる両都市圏を結ぶ移動手段として、交通渋滞の軽減や新たな需要を掘り起こす可能性を秘めています。しかし、現状の計画では速達性の面で自動車には太刀打ちできません。一方で、計画されている高速鉄道を前進させるには資金調達をどうするかなどの課題が山積みであり、実現するまでには10年スパンの相当な時間がかかると予想されます。

また利便性の面においても、スプロール現象が進んでいる両都市においては、駅から目的地までのラストマイルモビリティをいかに提供できるかが非常に重要になってきます。したがって、アムトラックのインターシティ列車の定着には、MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)などを最大限に活用して、きめ細かいサービスを提供することで乗客の確保に繋げていく必要がありそうです。

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