ニューヨーク州都市交通局(Metropolitan Transportation Authority: MTA)は、ニューヨーク市地下鉄において、パンデミック以降ホームからの転落事故、突き落とし事件が増加していることを受け、マンハッタンとクイーンズの地下鉄駅3駅で試験的にホームドアを設置すると発表しました。近年、日本の都市鉄道でもホームドアの設置が急速に進んでいますが、導入が実現すればニューヨーク市地下鉄では初めての事例となります。MTAでは、2014年ごろから地下鉄ホームの安全性向上に向けて、ホームドア設置の可能性について調査を進めてきましたが、築100年以上の構造物が多く存在するニューヨーク地下鉄では、技術的、コスト的な課題が多いことから消極的な姿勢を示していました。

線路内立ち入り入件数が増加
Image: MTA

MTAによると、2021年のニューヨーク地下鉄および通勤鉄道における線路内立ち入り件数は1,267件と、パンデミック前の2019年と比較して約20%増加したとのことで、そのうち68件については死亡事故につながったとしています。

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こちらは、線路内立ち入り件数を示したマップです。特に人流が多いマンハッタンで多発していることがわかります。

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2022年1月からは、より詳細なデータ分析をするために衝突事故などに至らなかったケースも含めた線路内立ち入り件数を調べた結果、2022年1月のみで160件が確認されたそうです。そのうち7割以上は自ら線路内に立ち入ったケースで、さらにそのうち3割程度は何らかの精神疾患を抱えた乗客だったという結果が発表されました。

2024年までに地下鉄3駅で試験的にホームドアを導入

今回、試験的にホームドアが設置されることになった3駅は、7トレインのタイムズスクエア・42ストリート(Times Sq- 42 St)、Lトレインのサードアベニュー(3 Avenue)、Eトレインのサットフィンブルバード・アーチャーアベニュー・JFKエアポート(Sutphin Blvd-Archer Av-JFK Airport)駅となります。これらの駅は、いずれも地下駅で利用者が多いこと、ホームの構造上ホームドアの設置が可能、運用車両形式が統一されている駅として選択されました。設置完了時期は2024年までとされています。

タイムズスクエア・42ストリート駅
7トレインのタイムズスクエア・42ストリート駅(島式ホーム)
Image: MTA

7トレインのタイムズスクエア・42ストリート駅は1面2線の島式ホームとなっており、タイムズスクエアの最寄駅となることから、ニューヨーク地下鉄で最も利用客の多い駅(他路線含む)となっています。今回ホームドアが試験設置される中で唯一、かつてインターボロー・ラピッド・トランジット(Interborough Rapid Transit Company: IRT)が運行していた車両規格が小さいAディビジョン(数字の路線番号)の駅となります。

サードアベニュー駅
Lトレインのサードアベニュー駅(対向式ホーム)
Image: MTA

Lトレインのサードアベニュー駅は2面2線の対向式ホームとなっています。この駅は、かつてブルックリン・マンハッタン・トランジット(Brooklyn–Manhattan Transit Corporation: BMT)が運行していた車両幅が大きいBディビジョンの駅となります。

サットフィンブルバード・アーチャーアベニュー・JFKエアポート駅
Eトレインのサットフィンブルバード・アーチャーアベニュー・JFKエアポート駅(島式ホーム)
Image: MTA

Eトレインのサットフィンブルバード・アーチャーアベニュー・JFKエアポート駅は1面2線の島式ホームとなっています。この駅は、かつてのインディペンデント・サブウェイ・システム(Independent Subway System: IND)の路線で、BMTと同じく車両幅が大きいBディビジョンの路線となります。

設置されるホームドアの種類
Image: MTA

気になる設置されるホームドアのタイプについては、MTAのフィージビリティスタディによると、フルスクリーンタイプ(ゆりかもめなどで見かけるタイプ)、または可動式ホーム柵(山手線などで見かけるタイプ)のいずれかが検討された結果、可動式ホーム柵(高さ約1.4メートル)が望ましいとされています。ちなみに、昇降式ホーム柵(ワイヤロープ方式)も検討されたようですが、落下するものをブロックする効果が少ないことや、上昇するロープでケガをする恐れがあるとして検討対象からは外されたようです。

ニューヨーク地下鉄で多く見かけるこのような高架駅は構造上ホームドアの設置ができない
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なお、現時点においてホームの補強工事のみでホームドアを設置可能と判断された駅は、地下鉄全472駅中、41駅のみとなっています。理由としては、多くの地下駅はホーム幅が狭く設置場所がない(バリアフリー対応ができない)、支柱とホーム先端の間のスペースが狭すぎる、運用車両形式が統一されておらずドア配置が異なるといった点があげられています。さらに、ほとんどの高架駅についても構造上ホームドアの重みに耐えられないことも大きな要因となっています。

多くの地下駅は支柱とホーム先端のスペースが非常に狭くなっている
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なお、新型車両の導入によって車両統一が進む2033年には、さらに87駅についてもホームドアの設置が可能になるとしています。いずれにせよ、ニューヨークの地下鉄全駅にホームドアを設置するには莫大な費用と時間が要することになりそうです。

Source: MTA, SYSTEM-WIDE PLATFORM SCREEN DOOR FEASIBILITY STUDY

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