建設が進むカリフォルニア高速鉄道ネットワーク(パームデール〜バーバンク編)

全米一の人口を抱えるカリフォルニア州では、サンフランシスコ、ロサンゼルス、サンディエゴ、サクラメントなど、州内の主要都市を最高時速320km以上の高速鉄道で結ぶ「カリフォルニア高速鉄道(California High-Speed Rail: CAHSR)」プロジェクトが進行中です。同プロジェクトはカリフォルニア州高速鉄道局(California High-Speed Rail Authority)が中心となって進められているもので、2008年には、最重要区間であるサンフランシスコ〜ロサンゼルス/アナハイム間の建設費の一部に州の税金を投じることを問う住民投票「Proposition 1A」が承認されました。

以降、幾度となく着工延期、計画変更、規模縮小などが繰り返されてきたCAHSRプロジェクトですが、現在、一部区間では着々と建設工事が進められています。今回は、そんなCAHSRプロジェクトについて調べてみたいと思います。第7回は、2033年の開業を目指しているベーカーズフィールド(Bakersfield)〜ロサンゼルス・アナハイム(Los Angeles/Anaheim)間のうち、パームデール(Palmdale)からウォルトディズニースタジオ(Walt Disney Studios)などがあることで有名なバーバンク(Burbank)までの進捗状況ついてさらに詳細を見ていきます。

パームデール〜バーバンク間の概要
セントラルバレーエリア〜南カリフォルニアエリアの接続路線マップ
Image: Draft 2022 Business Plan

パームデール〜バーバンク間は、ロサンゼルス・アナハイムまでの区間ととも2033年に開業予定の区間となります。パームデールではメトロリンク(Metrolink)と接続、バーバンク駅はハリウッド・バーバンク空港付近に建設される予定で、高速鉄道によって両駅間はおよそ13分で結ばれることになります。

建設ルートおよび整備方式
全区間を高速鉄道路線として整備
パームデール〜バーバンク間の整備案(SR14A、E1A 、E2A、SR14、E1、E2)
Image: Palmdale to Burbank Fact Sheet

パームデールからバーバンクまでの区間は現在の環境アセスメントが実施されており、6つの路線案が検討されています。この区間は、最高時速320km以上に対応した区間で、路線延長は約56km〜66km(整備案により異なる)となっています。

サンガブリエル山地を越えるため2つの長大トンネルを建設

パームデールのあるアンテロープ・バレー(Antelope Valley)とバーバンクのあるサンフェルナンド・バレー(San Fernando Valley)を隔てるサンガブリエル山地(San Gabriel Mountains)を越える区間となるため、全長約20kmおよび22kmにおよぶ2つの長大トンネルが建設される予定です。

駅の整備方法
ハリウッド・バーバンク空港駅

CAHSRのハリウッド・バーバンク空港(Hollywood Burbank Airport)駅の建設予定地は、2024年の共用開始を目指す同空港の新ターミナルの地下部分となります。

Image: CHSRA

CAHSRの駅建設予定地の周辺には、メトロリンクのベンチュラカウンティ線(Ventura County Line)とアンテロープバレー線(Antelope Valley Line)のバーバンク空港駅がありますが、少し距離が離れています。

Image: Burbank Airport Station

CAHSRの駅は、相対式ホーム2面2線を有する地下駅として整備されます。バーバンク駅にはほぼ全ての列車が停車する予定ですが、ラッシュ時などに運行されるサンフランシスコ〜ロサンゼルス間ノンストップ列車に対応するため通過線2線も設置されるようです。

Image: Burbank Airport Station

駅周辺には空港利用者向けの大規模な駐車場が整備されます。イメージの左に描かれているのはメトロリンクの駅となります。

Image: Burbank Airport Station

同駅の断面図です。空港のターミナルに直結する高速鉄道駅ということもあり、広範囲からの利用者にとって非常に利便性の高い駅となりそうです。

Image: City of Burbank

こちらは、2024年からの共用開始を目指しているバーバンク空港の新ターミナルの完成イメージです。新ターミナルが完成した後、旧ターミナルは解体される予定です。

進捗状況
Image: Permitting Dashboard

パームデール〜バーバンク間の環境アセスメントは、当初2021年春頃に準備書(DEIS)が公表される予定でしたが、現在は2022年6月ごろに変更となっています。その後はパブリックコメントなどを受け付け、2023年2月に評価書(FEIS)、同年3月にRecord of Decision(ROD)を発行する予定となっています。なお、2月25日付けのロサンゼルスタイムズの記事によると、高速鉄道の地下駅建設によって空港オペレーションに影響があるとして、バーバンク空港が同駅周辺の環境アセスメントのやり直しを求める訴訟を起こしています。そのため、この訴訟の結果次第では全体のスケージュールに大幅な遅れが発生する可能性も出てきています。

Source: Palmdale to Burbank Fact SheetPermitting Dashboard

※1ドル=130円で計算

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