車両の快適性は北米随一!?ダラス・フォートワース国際空港の鉄道アクセスとは

アメリカ第4位の都市圏人口を有するダラス・フォートワース複合都市圏は、テキサス州北部に位置し、フォーチュン500(Fortune 500)と呼ばれるアメリカの総収入ランキング上位500社に入る企業が多く拠点を置いている北米有数の経済中心都市として知られています。また、近年はテック企業の移転などによって若者の人口増加が進んでいるほか、トヨタ自動車の北米本社などが移転してきたことで日本人の人口も増加しているエリアとなっています。そんな、ダラス・フォートワース複合都市圏の空の玄関口「ダラス・フォートワース国際空港(Dallas Fort Worth International Airport: DFW空港)」には、2014年からダラス高速運輸公社(Dallas Area Rapid Transit、DART)が運行するDARTライトレール、2019年からトリニティーメトロ(Trinity Metro)が運行するTEXレール(TEX Rail)と呼ばれる鉄道が乗り入れています。

今回、DFW国際空港に乗り入れているDARTおよびTEXレールに乗車する機会がありましたので、同空港の鉄道アクセスの速達性、経済性、利便性、快適性、安全性についてみていきたいと思います。

※情報は2023年10月時点のものです。各交通機関等の最新の情報は公式HPなどでご確認ください。

DFW空港の位置・規模

ダラス・フォートワース国際空港はダラス市およびフォートワース市のほぼ中間に位置しており、2022年の年間総旅客数約7,300万人(パンデミック前の2019年は年間約7,500万人)で、全米第2位の規模を誇る国際空港です。また、アメリカン航空の一大ハブ空港となっており、発着便の半数以上を同社航空便が占めているのも大きな特徴となっています。

日本との直行便ダイヤ

現在、日本からDFW国際空港へは、羽田空港、成田空港から合計3便の直行便が毎日運航されており、所要時間はおおよそ11時間30分〜14時間程度となっています。以下は、2023年冬ダイヤ(10月29日〜2024年3月30日)における日本からダラス・フォートワースまでの直行便スケージュールです。

日本発ダラス・フォートワース行き

航空会社便名出発空港出発時刻到着時刻所要時間運行日機材
日本航空
(Japan Airlines)
JL12東京/羽田
(HND)
10:5507:3511:40毎日77W
アメリカン航空
(American Airlines)
AA176東京/羽田
(HND)
18:0014:3511:35毎日788
アメリカン航空
(American Airlines)
AA60東京/成田
(NRT)
18:2514:5511:30毎日788

ダラス・フォートワース発日本行き

航空会社 便名出発空港出発時刻到着時刻所要時間運行日機材
日本航空
(Japan Airlines)
JL11東京/羽田
(HND)
10:4515:25
(翌日)
13:40毎日77W
アメリカン航空
(American Airlines)
AA175東京/羽田
(HND)
13:4018:25
(翌日)
13:45毎日788
アメリカン航空
(American Airlines)
AA61東京/成田
(NRT)
10:3015:30
(翌日)
14:00毎日788
DFW空港へ乗り入れている鉄道路線

2023年10月現在、DFW空港には、ダラス高速運輸公社(Dallas Area Rapid Transit、DART)が運行するライトレール路線オレンジライン、トリニティーメトロ(Trinity Metro)が運行するTEXレール(TEX Rail)が乗り入れています。

運行事業者路線路線エリア
ダラス高速運輸公社
(Dallas Area Rapid Transit: DART)
オレンジライン
(Orange Line)
アービング(Irving)
ダラス(Dallas)
※リチャードソン(Richardson)
※プレイノ(Plano)
トリニティーメトロ
(Trinity Metro)
TEXレール
(TEXRail)
グレープバイン(Grapevine)
ノースリッチランド(North Richland)
フォートワース(Fort Worth)
※ラッシュ時のみ直通運転あり
DART・オレンジライン

DARTライトレールは、1996年にレッドラインおよびブルーラインが開業したのを皮切りに、現在はグリーンライン、オレンジラインを含む4路線総延長約150kmの路線を有しています。このうち、DFW空港へ乗り入れている路線はオレンジラインとなっており、空港駅は2014年に開業しました。

Image: DART
速達性 ☆☆☆

DART・オレンジラインは路面電車に近い路線形式となっているため、高速移動手段としての役割はありません。そのため、ダラス都市圏の発達した高速道路網を利用して多くの目的地へダイレクトかつ直線的に移動できる車と比較して、速達性メリットはほぼありません。以下は、主要エリアへの所要時間の比較です。

エリア主要駅所要時間
(DART)
所要時間
(自動車)
アービング
(Irving)
アービング・コンベンションセンター
(Irving Convention Center)
17分12〜20分
ダラス・ダウンタウン
(Downtown)
アカード
(Akard)
52分24〜40分
リチャードソン
(Richardson)
シティライン・ブッシュ
(CityLine/Bush)
87分28〜45分
プレイノ
(Plano)
ダウンタウン・プレイノ
(Downtown Plano)
9030〜45分
経済性 ★★★★★

DARTには速達性は期待できない反面、運賃は全線均一で3ドルとなっており、最終目的地が駅周辺の場合はカーシェアリングと比較してかなりお得な移動手段となります。

エリア主要駅料金
(DART)
料金
(カーシェアリング)
アービング
(Irving)
アービング・コンベンションセンター
(Irving Convention Center)
3ドル(2ドル*)5〜30ドル
ダラス・ダウンタウン
(Downtown)
アカード
(Akard)
3ドル(2ドル*)27〜49ドル
リチャードソン
(Richardson)
シティライン・ブッシュ
(CityLine/Bush)
3ドル(2ドル*)35〜63ドル
プレイノ
(Plano)
ダウンタウン・プレイノ
(Downtown Plano)
3ドル(2ドル*)35〜63ドル
*Midday Pass(9:30〜14:30の間)は2ドル
利便性 ★★★

オレンジラインは20分間隔(ピーク時は10分間隔)での運転となっており、運行本数はライトレールとしてはあまり多くありません。なお、全ての駅がバリアフリーに対応しており、高架駅にはエレベーターが、地上駅にはスロープが設置されています。運賃の支払いは券売機でのチケット購入以外にモバイルアプリ(GoPass)に対応しています(事前にアプリのダウンロードが必要)。

利便対応状況詳細
高頻度運転10分間隔(朝・夕ピーク時間帯)
20分間隔(オフピークおよび休日)
駅のバリアフリー全駅
モバイルチケットGoPassアプリ
(Apple・Android端末に対応)
クレジットカードタッチ決済×
快適性 ★★☆☆☆

オレンジラインはライトレールのため、小型車両が使用されています。そのため、車内の通路幅などが狭く、座席サイズや配置も大型荷物を持った利用者には使い難いものとなっており、長時間の移動には向いていません。

車両の快適設備対応状況
バリアフリー
(中間車両のみバリアフリー対応)
大型荷物対応スペース
(車椅子スペースが空いている場合のみ)
座席指定×
充電用USBポート×
車内WiFi×
トイレ×
情報提供ディスプレイ×
外国語案内
(スペイン語のみ)
安全性 ★★☆☆☆

ダートのライトレール沿線は治安の悪いエリアもあるため注意が必要です。基本的にダウンタウンエリアや他線との乗換え駅は犯罪発生件数も多くなっています。なお、DFW空港駅からアービング市内にあるダラス大学駅までは比較的安全なエリアとなっています。

エリア主要駅安全性(参考)NIBRS*報告件数
2021年1月〜6月
Source: DART
グレープバイン
(Grapevine)
DFW空港ターミナルA
(DFW Airport Terminal A)
0
アービング
(Irving)
アービングコンベンションセンター
(Irving Convention Center)
2
ダラス・ダウンタウン
(Downtown)
ウエストエンド
(West End)
×32
ダラス・ダウンタウン
(Downtown)
アカード
(Akard)
×10
リチャードソン
(Richardson)
 シティーライン・ブッシュ
(CityLine/Bush)
×5
プレイノ
(Plano)
ダウンタウン・プレイノ
(Downtown Plano )
×3
*National Incident-Based Reporting System
TEXレール

TEXレールは、 フォートワースの北東エリアおよびDFW空港を結ぶ鉄道路線として2019年に開業しました。

Image: Trinity Metro
速達性 ★★★★

ライトレール路線のDARTとは異なり通勤鉄道として建設されたため駅数が少なく、自動車にはわずかに及びませんが高速輸送としての役割をあわせ持つ路線となります。以下は、主要エリアへの所要時間の比較です。

エリア主要駅所要時間
(TEXレール)
所要時間
(自動車)
グレープバイン
(Grapevine)
グレープバイン・メインストリート
(Grapevine/Main Street)
10分10〜18分
ノースリッチモンドヒルズ
(North Richland Hills)
ノースリッチモンドヒルズ・アイアンホース
(North Richland Hills/Iron Horse)
29分20〜35分
フォートワース・ダウンタウン
(Downtown)
フォートワースセントラル
(Fort Worth Central)
49分30〜50分
経済性 ★★★★

運賃は全線均一で2.50ドルとなっており、DARTと同じく最終目的地が駅周辺の場合はカーシェアリングと比較してかなりお得になります。

エリア主要駅料金
(TEXレール)
料金
(カーシェアリング)
グレープバイン
(Grapevine)
グレープバイン・メインストリート
(Grapevine/Main Street)
2.50ドル15〜30ドル
ノースリッチモンドヒルズ
(North Richland Hills)
ノースリッチモンドヒルズ・アイアンホース
(North Richland Hills/Iron Horse)
2.50ドル19〜32ドル
フォートワース・ダウンタウン
(Downtown)
フォートワースセントラル
(Fort Worth Central)
2.50ドル27〜49ドル
利便性 ★★★

TEXレールは60分間隔(ピーク時は30分間隔)での運転となり、利便性という面では少し劣ります。全ての駅がバリアフリーに対応しており、高架駅にはエレベーターが、地上駅にはスロープが設置されています。運賃の支払いは券売機でのチケット購入以外にモバイルアプリ(GoPass)に対応しています(事前にアプリのダウンロードが必要)。

利便対応状況詳細
高頻度運転30分間隔(朝・夕ピーク時間帯)
60分間隔(オフピーク)
駅のバリアフリー全駅
モバイルチケットGoPassアプリ
(Apple・Android端末に対応)
クレジットカードタッチ決済×
快適性 ★★★★

TEXレールの車両には、スイスの車両メーカーであるシュタッドラー製の「Flirt」と呼ばれる新型車両が導入されています。この車両は、通勤路線かつ空港アクセスを前提にした仕様になっているため、大型荷物対応スペースや充電用USBポートなどが設置されています。また、車内WiFiも利用可能となっています。そのため、アメリカの空港鉄道アクセス鉄道の車両としては随一とも言える快適性を誇ります。

車両の快適設備対応状況
バリアフリー
大型荷物対応スペース
座席指定×
充電用USBポート
車内WiFi
トイレ
情報提供ディスプレイ
外国語案内
(スペイン語のみ)
安全性 ★★★★☆

TEXレールは通勤鉄道路線のため、車内検札のための車掌が全ての列車に乗務しています。そのため、時間帯に関係なく、安心して乗車することができます。

エリア主要駅安全性(参考)NIBRS*報告件数
グレープバイン
(Grapevine)
DFW空港ターミナルA
(DFW Airport Terminal A)
データなし
グレープバイン
(Grapevine)
グレープバイン・メインストリート
(Grapevine/Main Street)
データなし
ノースリッチモンドヒルズ
(North Richland Hills)
ノースリッチモンドヒルズ・アイアンホース
(North Richland Hills/Iron Horse)
データなし
フォートワース・ダウンタウン
(Downtown)
フォートワースセントラル
(Fort Worth Central)
データなし
*National Incident-Based Reporting System
将来の鉄道アクセス

DFW空港とキャロルトン(Carrollton)、アディソン(Addison)、リチャードソン(Richardson)およびプレイノ(Plano)を結ぶ鉄道路線、ダート・シルバーラインが2024年の開通を目指して建設中です。通勤鉄道として建設されておりTEXレールと同じ車両が導入される予定です。

まとめ

今回はダラス・フォートワース複合都市圏の空の玄関口であDFW国際空港の鉄道アクセスについて紹介しましたがいかがでしたでしょうか?ダラス・フォートワース都市圏は、車社会のアメリカを象徴する都市となっており、鉄道のみでアクセスできる目的地は非常に限られています。特に、DARTライトレールは自動車と比較して速達性や快適性が非常に劣ってしまうため、アービングコンベンションセンターなど空港周辺へ行く際以外はほぼ利用するメリットはないかと思います。一方で、フォートワース方面へ行くTEXレールは、北米随一の快適性を誇る車両が使用されており、おすすめできる路線となっています。皆さんも、フォートワースへ訪れる機会があれば、TEXレールの利用をぜひ検討してみてはいかがでしょうか。

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