全米一の人口を抱えるカリフォルニア州では、サンフランシスコ、ロサンゼルス、サンディエゴ、サクラメントなど、州内の主要都市を最高時速320km以上の高速鉄道で結ぶ「カリフォルニア高速鉄道(California High-Speed Rail: CAHSR)」プロジェクトが進行中です。同プロジェクトはカリフォルニア州高速鉄道局(California High-Speed Rail Authority)が中心となって進められているもので、2008年には、最重要区間であるサンフランシスコ〜ロサンゼルス/アナハイム間の建設費の一部に州の税金を投じることを問う住民投票「Proposition 1A」が承認されました。
以降、幾度となく着工延期、計画変更、規模縮小などが繰り返されてきたCAHSRプロジェクトですが、現在、一部区間では着々と建設工事が進められています。今回は、そんなCAHSRプロジェクトについて調べてみたいと思います。第5回は、2029年の先行開業を目指しているマーセド(Merced)〜ベーカーズフィールド(Bakersfield)間のうち、フレズノ(Fresno)からベーカーズフィールドまでの進捗状況ついてさらに詳細を見ていきます。
フレズノ〜ベーカーズフィールド間の概要
フレズノ〜ベーカーズフィールド間は、マーセド〜フレズノ間と同じく2029年に開業予定の区間となります。同区間には、途中、ハンフォード(Hanford)、トゥーレアリ(Tulare)、コーコラン(Corcoran)、バイセイリア(Visalia)といった街のゲートウェイとなるキングス・トゥーレアリ(Kings/Tulare)駅が設置される予定です。ベーカーズフィールド〜ロサンゼルス・アナハイム間が開通する予定の2033年までは、ベーカーズフィールドがCAHSRの南側暫定ターミナルとなります。
建設ルートおよび整備方式
全区間を高速鉄道路線として整備
フレズノからベーカーズフィールドまでの区間(約183km)の環境アセスメントはすでに終了しており、2014年に最終的な建設ルートなどが決定しています(ROD)。この区間はほぼ全区間が時速320km以上に対応する予定で、キングス・トゥーレアリやベーカーズフィールド付近の高架区間を除き大半が地上区間として整備されます。なお、シャフター(Shafter)付近のポプラーアベニュー(Poplar Avenue)からベーカーズフィールドまでの区間(約37km)については、沿線自治体からの要請を受けて、2019年に整備計画の変更が実施されています(Supplemental ROD)。このため、現在、フレズノ〜ベーカーズフィールド間で着工している区間はポプラーアベニュー以北になっています。
単線での整備も検討
2020年ビジネス計画書(2020 Business Plan)によると、2029年の先行開業を予定しているマーセド〜ベーカーズフィールド間について、初期コストをなるべく抑えるための暫定措置として、単線として整備することが検討されています。そのため、フレズノ〜ベーカーズフィールド間についても、当初は単線として整備される可能性があります。この場合、通過線を駅などに設けることで、同区間開業時に予定されている1日18往復程度の運行が可能としています。この案で整備される場合、将来の需要に応じて段階的に複線化されることになります。
建設状況
フレズノ駅の南に建設中のシダー高架橋(Cedar Viaduct)は、約3,700フィート(1,120m)あります。また、特徴的なアーチ橋も建設されます。
BNSFの貨物線をオーバークロスするコネホ高架橋は約2,000フィート(約600m)あります。
ハンフォード高架橋の全長は、高架駅として建設されるキングス・トゥーレアリ駅を含めて約6,330フィート(1,929m)あり、セントラル・バレーエリアで建設される構造物として最大となります。
完成したガルセス・ハイウェイ高架橋と、セントラル・バレーの特徴的な風景の中に緩やかなカーブを描きながら伸びる盛り土区間です。
ウォスコ高架橋は、BNSFの貨物線をオーバークロスする全長約2,000フィート(約600m)ある巨大な構造物となる予定です。
セントラルバレーを走るCAHSRのイメージ動画です。
駅の整備方法
キングス・トゥーレアリ駅
キングス・トゥーレアリ駅は、サン・ホアキンが停車するハンフォード駅から離れた場所に建設されます。
キングス・トゥーレアリ駅の建設予定地には、クロス・バレー・コリダー(Cross Valley Corridor)と呼ばれる貨物線が通っており、将来的にこの貨物線に通勤列車を運行する計画もあります。
高架駅ということで、日本のフル規格新幹線駅に近い印象を受けます。
キングス・トゥーレアリ駅は、高架駅で通過線2線と相対式ホーム2面2線の構造となります。
ベーカーズフィールド駅
ベーカーズフィールド駅は、当初計画ではアムトラックの駅の隣に建設される予定でしたが、2019年に地元からの要望で計画が変更されたため、ダウンタウンからかなり離れた位置(F Street Station案)に建設されます。
ダウンタウンまでのアクセスを確保するため、BRTなどの整備も計画されています。なお、ベーカーズフィールド〜ロサンゼルス間が2033年に開通するまでは、当駅からロンゼルス方面への高速バスが運行されることになっています。
駅の周辺には再開発ビルなどが建設される予定です。
ベーカーズフィールド駅は高架駅として建設されます。2014年の最終評価書では相対式ホーム2面2線と通過線2線を設置する計画で進められていました。現在は、2019年に変更されたF Street Station案で計画が進められているため、ホームの配置などは変わる可能性があります。
進捗状況
2022年ビジネス計画書案によると、フレズノ〜ベーカーズフィールド間のうち、既に着工済みのフレズノ〜ポプラーアベニュー間の建設工事については8割近くが完成している状況となっています。また、ポプラーアベニュー〜ベーカーズフィールド間についても、今年前半には設計などを担当する業者が発表される予定となっています。
※1ドル=119円で計算
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