全米一の人口を抱えるカリフォルニア州では、ロサンゼルスやサンフランシスコといった州内の主要都市を最高速度320km/h以上で走行可能な高速鉄道で結ぶ「カリフォルニア高速鉄道(California High-Speed Rail: CAHSR)」の整備が進められています。同プロジェクトは、カリフォルニア州高速鉄道局(California High-Speed Rail Authority: CHSRA)が中心となって進められており、これまでにカリフォルニア州中央部に位置するセントラル・バレー(Central Valley)の一部区間がすでに着工されています。また、フェーズ1として整備されるサンフランシスコ〜ロサンゼルス/アナハイム間のうち、およそ8割の区間で環境アセスメントが完了しており、2023年時点において、最も計画が進んでいる米国の高速鉄道プロジェクトの一つとなっています。
カリフォルニア高速鉄道とは?
これまでの経緯
米国運輸省(United States Department of Transportation: USDOT)傘下の連邦鉄道局(Federal Railroad Administration: FRA)は、「1991年インターモーダル陸上輸送効率化法(Intermodal Surface Transportation Efficiency Act of 1991: ISTEA)」が制定されたことを受け、高速都市間移動手段の整備を目指すべきエリアとして、1992年に「カリフォルニア回廊(California Corridor)」を含む5つの回廊を指定しました。
その後、1996年になるとカリフォルニア州高速鉄道局が設置され、カリフォルニア高速鉄道の必要性や大まかな整備ルートなどを取りまとめた整備計画が作成されることになります。2008年にはその整備計画をもとに、高速鉄道の整備費用の一部に米国地方債の一つである一般財源保証債(General obligation bond)を充てることの是非を問う州民投票「Proposition 1A(Prop 1A)」が実施され、賛成多数で可決されました。また、翌年には連邦政府による高速鉄道などへの投資を含む「2009年アメリカ復興・再投資法(ARRA)」が制定されたことを受け、事業化に向けた動きが具体化していくことになります。
整備ルート
カリフォルニア高速鉄道は、ロサンゼルス、サンフランシスコ、サンノゼ、サンディエゴ、サクラメントなど、カリフォルニア州の主要都市を結ぶ高速鉄道ネットワークで、総延長およそ800マイル(約1,300km)におよぶ路線が整備される計画です。なお、Prop 1Aには州中央部の主要都市も高速鉄道のルートに含めることが条件の一つとして規定されているため、サンフランシスコとロサンゼルスを結ぶルートは、最短ルートではなくフレズノ(Fresno)やベーカーズフィールド(Bakersfield)といったセントラル・バレーの主要都市を経由するルートとなっています。
整備区間 | 距離 | |
---|---|---|
フェーズ1 | サンフランシスコ〜ロサンゼルス〜アナハイム | 520マイル (約840km) |
フェーズ2 | サクラメント〜マーセド、ロサンゼルス〜サンディエゴ | 282マイル (約454km) |
フェーズ1の概要
フェーズ1として整備されるサンフランシスコからロサンゼルス/アナハイムまでの区間は、総延長およそ520マイル(約840km)となる予定で、最大で16駅が設置される計画です。フェーズ1は、全区間の7割以上が設計最高速度320km/h以上の高速新線として整備される予定ですが、サンフランシスコおよびロサンゼルス近郊エリアについては、建設コストを抑えるために在来線を改良する方式で整備されます。これにより、サンフランシスコ〜ロサンゼルス間は最速2時間39分で結ばれることになります。現在、フェーズ1全体の開業時期は示されていませんが、優先して整備が進めらているマーセド(Merced)〜ベーカーズフィールド(Bakersfield)間については、2030〜33年の間に先行開業する予定となっています。
事業名 | カリフォルニア高速鉄道フェーズ1(California High Speed Rail Phase 1) |
路線延長 | 約520マイル(約840km) 路盤区間ーkm、橋梁区間ーkm、高架橋区間ーkm、トンネル区間ーkm |
分類 | コア・エクスプレス(Core Express) ※FRAの基準で高速専用線を200 km/h以上で走行可能な移動手段のことを意味する。 |
整備費用 | 約885〜1,280億ドル(約12兆2,814億円〜約17兆7,629億円) ※1米ドル=138円で計算 |
需要予測 | 3,130万人(2040年時点の年間利用者数予測) |
運行事業者 | ドイツ鉄道グループ DB E.C.O. North America Inc.(旧DB Engineering & Consulting USA) |
使用車両 | 最高速度320km/h以上での営業運転に対応した電車 |
最高速度* | サンフランシスコ〜サンノゼ〜ギルロイ:180 km/h(カルトレインとの共用区間) ギルロイ〜バーバンク:320 km/h以上(高速鉄道専用線) バーバンク〜ロサンゼルス〜アナハイム:180〜200 km/h(メトロリンクとの共用区間) |
所要時間 | サンフランシスコ〜ロサンゼルス:2時間39分 サンノゼ〜ロサンゼルス:2時間10分など |
運行本数* | 4往復/時(ラッシュ時)、3往復/時(ラッシュ時以外) ※サンフランシスコ〜ロサンゼルス間の本数(区間運転列車は含まず) |
計画駅 | セールスフォース・トランジット・センター(Salesforce Transit Center: STC) 4th・タウンゼンド(4th and Townsend) ※4th・キングストリート(4th and King Street)→STCが開業するまでの暫定ターミナル ミルブレー・SFO(Millbrae-SFO) サンノゼ・ディリドン(San Jose Diridon) ギルロイ(Gilroy) マーセド(Merced) マデラ(Madera) フレズノ(Fresno) キングス – トゥーレアリ(Kings–Tulare) ベーカーズフィールド(Bakersfield) パームデール(Palmdale) バーバンク空港HSR(Burbank Airport HSR) ロサンゼルス・ユニオン・ステーション(Los Angeles Union Station) ※ノーウォーク/サンタフェ・スプリングス(Norwalk/Santa Fe Springs)→オプション駅 ※フラートン(Fullerton)→オプション駅 アナハイム・ARTIC(Anaheim ARTIC) |
主要な構造物 | パチェーコ・パス・トンネル(全長21km) サン・ホアキン川高架橋(1,400m) フレズノ掘割(1,600m) シダー高架橋(1,120m) コネホ高架橋(600m) ハンフォード高架橋(1,929m) ウォスコ高架橋(600m) テハチャピ山地に建設される9つのトンネル(総延長17km) サンガブリエル山地に建設される長大トンネルなど |
開業目標時期 | 2030〜33年(マーセド〜ベーカーズフィールド間) ※その他の区間の開業時期は未定 |
*最高速度および運行本数は2018 Business Planを参照
フェーズ2の概要
フェーズ2では、マーセドからサクラメントまでの約115マイル(約185km)、ロサンゼルスからサンディエゴまでの約167マイル(約270km)の区間が整備される計画ですが、詳細ルート、設置駅などは、今後、プロジェクトレベルの環境アセスメントが実施される際に決まる予定です。
現時点においてフェーズ2で整備される区間の最高速度は、マーセドからサクラメントまでの区間が240〜320km/h、ロサンゼルスからサンディエゴまでの区間が160〜320km/h程度と想定されており、実現するとサクラメント〜ロサンゼルス間が2時間9分、サンディエゴ〜ロサンゼルス間が1時間程度で結ばれる予定です。
事業名 | カリフォルニア高速鉄道フェーズ2(California High Speed Rail Phase 2) |
路線延長 | サクラメント延伸区間 約115マイル(約185km) 路盤区間ーkm、橋梁区間ーkm、高架橋区間ーkm、トンネル区間ーkm サンディエゴ延伸区間 約167マイル(約269km) 路盤区間ーkm、橋梁区間ーkm、高架橋区間ーkm、トンネル区間ーkm |
分類 | コア・エクスプレス(Core Express) ※FRAの基準で高速専用線を時速200km以上で走行可能な移動手段のことを意味する。 |
整備費用 | ー |
需要予測 | ー |
運行事業者 | ー |
使用車両 | ー |
最高速度* | サクラメント延伸区間 サクラメント〜ストックトン:240〜320 km/h ストックトン〜マーセド:320 km/h以上 サンディエゴ延伸区間 ロサンゼルス〜リバーサイド:160〜240 km/h リバーサイド〜エスコンディード:240〜320 km/h エスコンディード〜サンディエゴ:160〜240 km/h |
所要時間* | サクラメント〜ロサンゼルス:2時間9分 サンディエゴ〜ロサンゼルス:1時間0分 |
運行本数 | ー |
計画駅 | サクラメント延伸区間 サクラメント(Sacramento) ストックトン(Stockton) モデスト(Modesto) サンディエゴ延伸区間 ※エルモンテ(El Monte)→オプション駅 ※ウェストコビナ(West Covina)→オプション駅 ※ポモナ(Pomona)→オプション駅 オンタリオ国際空港(Ontario International Airport) ※サンバーナーディーノ(San Bernardino)→オプション駅 ※リバーサイド(Riverside)→オプション駅 ※マリエータ(Murrieta)→オプション駅 エスコンディード(Escondido) サンディエゴ国際空港(San Diego International Airport) |
主要な構造物 | ー |
開業目標時期 | 未定 |
*最高速度および所要時間は2005年に公表されたTier 1 FEISによる
使用車両
CHSRAは、2030〜33年の間に予定されているマーセド〜ベーカーズフィールド間の先行開業に間に合わせるため、2028年までに高速運転試験用のプロトタイプ車両を2編成(8両編成2本)導入する予定です。その後、同区間の開業までに量産型車両4編成を増備し、合計6編成体制で営業運転が開始される予定です。なお、フェーズ1全体の整備が完了する時点では、さらに追加で66編成が必要となる予定です。
車両の調達プロセスについては2023年中に開始される予定で、2024年に調達先が決定する見込みとなっています。調達先としては、初期運行事業者であるドイツ鉄道グループと関係が深くサクラメントに車両工場もあるシーメンス、北東回廊向けの新型アセラを製造するアルストムが有力候補になると思われます。一方で、メリーランド州に高速鉄道車両の製造にも対応可能な新工場を建設中の日立レール、ニューヨークなどを中心に多くの北米向け車両を製造している川崎車両、近年北米マーケットのシェア拡大に成功しているシュタッドラーなどの動向も注目されます。
設計最高速度 | 220 mph(350 km/h) |
編成両数 | 8両編成* |
編成長 | 660フィート(約200m) |
座席数 | 450席以上 |
導入編成数 | 2028年まで:2編成(高速運転試験用プロトタイプ) セントラルバレー区間開業時まで:4編成(量産タイプ) フェーズ1全線開通時まで:66編成(量産タイプ) |
Source: Basis of Design Policy Document, 2020 Business Plan, 2020 Capital Cost Basis of Estimate Report、2023 Project Update Report
運行パターン(2020年時点の想定)
カリフォルニア高速鉄道の主要区間となるサンフランシスコ〜ロサンゼルス間では、ラッシュ時間帯に毎時4本(うち1本はノンストップ列車)、ラッシュ時間帯以外に毎時3本(うち1本はサンノゼ、バーバンク空港のみ停車)の列車が運行される計画です。これは、北東回廊の主要区間であるニューヨーク〜ワシントンD.C.間よりも多い運行本数となります。なお、運行時間帯は朝6時から深夜0時までで、新幹線と同様に一日6時間の保守・点検時間が確保される予定です。
運行区間 | ラッシュ時 | ラッシュ時以外 |
---|---|---|
サンフランシスコ〜ロサンゼルス(最速達列車) | 1本/時* | 1本/時** |
サンフランシスコ〜ロサンゼルス | 1本/時 | 1本/時 |
サンフランシスコ〜ロサンゼルス〜アナハイム | 2本/時 | 1本/時 |
サンノゼ〜ロサンゼルス | 2本/時 | 0本/時 |
マーセド〜ロサンゼルス〜アナハイム | 2本/時 | 1本/時 |
サンフランシスコ〜マーセド | 0.5本/時 | 0.5本/時 |
サンノゼ〜マーセド | 0.5本/時 | 0.5本/時 |
**サンノゼ〜バーバンク空港間ノンストップ
Source: 2020 Business Plan
整備エリアの現状
都市圏人口・経済規模
カリフォルニア州は全米で最も人口が多い州となっており、ロサンゼルス都市圏の人口だけでも1,000万人を超えているほか、これらの地域では、2050年にかけても人口増加が予想されています。また、都市圏GDPはロサンゼルスが全米第2位、サンフランシスコが全米第4位、サンノゼが全米第13位などとなっており、パンデミックの影響で成長速度の鈍化がみられるものの、今後も人口増加にともなう経済成長が見込まれています。
主要都市(フェーズ1) | 市域人口 (2020年) | 都市圏人口* (2020年) | 都市圏人口* (2050年予想) | 都市圏GDP* (2020年) |
---|---|---|---|---|
サンフランシスコ San Francisco, CA | 87万人 | 476万人 | 534万人 | 5,884億ドル (約81兆6,541億円) |
サンノゼ San Jose, CA | 101万人 | 203万人 | 242万人 | 3,584億ドル (約49兆7,363億円) |
マーセド Merced, CA | 8.6万人 | 28万人 | 37万人 | 97億ドル (約1兆3,461億円) |
マデラ Madera, CA | 6.6万人 | 16万人 | 21万人 | 65億ドル (約9,020億円) |
フレズノ Fresno, CA | 54万人 | 103万人 | 145万人 | 463億ドル (約6兆4,243億円) |
ハンフォード Hanford, CA | 5.8万人 | 15万人 | 19万人 | 68億ドル (約9,435億円) |
ベーカーズフィールド Bakersfield, CA | 40万人 | 91万人 | 122万人 | 450億ドル (約6兆2,439億円) |
ロサンゼルス Los Angeles, CA | 390万人 | 1,017万人** | 1,006万人** | 7,506億ドル** (約104兆1,487億円) |
アナハイム Anaheim, CA | 35万人 | 319万人** | 327万人** | 2,620億ドル** (約36兆3,535億円) |
**主要都市を中心とするMetropolitan Divisions(MD)の数値
Source: State of California、U.S. Bureau of Economic、U.S. Census Bureau
主要都市(フェーズ2) | 市域人口 (2020年) | 都市圏人口* (2020年) | 都市圏人口* (2050年予想) | 都市圏GDP* (2020年) |
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サクラメント Sacrament, CA | 52万人 | 237万人 | 291万人 | 1,467億ドル (約20兆3,580億円) |
ストックトン Stockton, CA | 32万人 | 78万人 | 97万人 | 327億ドル (約4兆5,378億円) |
モデスト Modesto, CA | 22万人 | 56万人 | 67万人 | 241億ドル (約3兆3,444億円) |
リバーサイド Riverside, CA | 31万人 | 463万人 | 574万人 | 1,920億ドル (約26兆6,407億円) |
サンディエゴ San Diego, CA | 139万人 | 335万人 | 358万人 | 2,418億ドル (約33兆5,507億円) |
Source: State of California、U.S. Bureau of Economic、U.S. Census Bureau
都市間移動(サンフランシスコ〜ロサンゼルス間)
最も多くの利用者が見込まれるサンフランシスコおよびロサンゼルスの両都市圏は、直線距離にして約350マイル(約560km)離れた場所に位置しており、これは東京から岡山県倉敷市までの直線距離とほぼ同じ距離となります。現在、両都市間の主な移動手段としては、所要時間順に飛行機、自動車、バス、鉄道がありますが、自動車、バス、鉄道を利用した場合の移動時間は6時間以上かかるため、航空便が非常に充実しているのが大きな特徴となっています。例えば、サンフランシスコ国際空港とロサンゼルス国際空港を結ぶ航空便だけでも1日30往復程度運航されており、同区間は旅客数が最も多い米国国内線ルートの一つとなっています。
移動方法 | 区間/経路 | 運行会社 | 最大頻度1 | 最短所要時間2 | 最安片道運賃1 |
---|---|---|---|---|---|
自動車 | I-5経由 | – | – | 5時間20分 (平均6時間) | – |
航空 | SFOーLAX | ユナイテッド アメリカン デルタ ジェットブルー サウスウェスト アラスカ | 34往復 | 1時間10分 | 45ドル |
航空 | SFOーBUR | サウスウェスト ユナイテッド | 9往復 | 1時間10分 | 63ドル |
航空 | OAKーLAX | デルタ サウスウェスト スピリット | 14往復 | 1時間10分 | 27ドル |
航空 | OAKーBUR | ジェットブルー サウスウェスト | 15往復 | 1時間10分 | 63ドル |
バス | ー | グレイハウンド フリックスバス メガバス | 17往復 | 7時間5分 | 40ドル |
鉄道 | サン・ホアキン 接続バス乗り継ぎ | アムトラック | 4往復 | 9時間30分 | 54ドル |
2:交通渋滞による遅延、空港、駅、バス停までの所要時間は含まず
SFO:サンフランシスコ国際空港、LAX:ロサンゼルス国際空港
OAK:オークランド国際空港、BUR:ハリウッド・バーバンク空港
高速鉄道の整備よって期待される効果
高速鉄道が整備されると、ロサンゼルスとサンフランシスコが最速2時間39分で結ばれるようになり、日帰りでの目的地滞在時間が最大で12時間程度確保されることになります。また、運賃も飛行機と競争力のある価格帯とすることがProp 1Aに規定されているため、両都市間をより気軽に移動できるようになります。これにより、新たな都市間移動需要の創出、飛行機や自動車から高速鉄道利用へのシフトが進むと予想され、地域経済の活性化や大都市近郊での渋滞緩和が期待されています。また、100%再生可能エネルギーを使用した運行が計画されているため、温室効果ガス排出量の大幅な削減も期待されています。
移動方法 | 区間 | 最大運行頻度 | 最短所要時間1 | 滞在可能時間2 | 最安片道運賃 |
---|---|---|---|---|---|
高速鉄道 (想定) | サンフランシスコ〜 ロサンゼルス | 4本/時 (ラッシュ時) 3本/時 (ラッシュ時以外) | 2時間39分 | 最大約12時間 | 約50ドル3 |
2:日帰りで移動する場合
3:Prop 1A Official Voter Information Guide
進捗状況・課題
先行開業区間となるマーセド〜ベーカーズフィールド間では、すでに着工されている119マイル(約192km)の区間では建設工事が佳境を迎えており、残りの52マイル(約84km)や駅についても構造物設計が進められています。また、サンフランシスコ近郊のカルトレインとの共用区間については、2024年後半の完成を目指してカルトレインの電化事業が先行して進められています。さらに、2023年中にパームデール〜バーバンク間、2025年中にロサンゼルス〜アナハイム間の環境アセスメント(Tier 2 EIS)評価書 (FEIS)が公表される見通しで、これにより、フェーズ1全区間において構造物設計などを進める準備が整うことになります。
一方で、長大な山岳トンネルなどが含まれるベイエリアとセントラルバレー、セントラルバレーとロサンゼルスを結ぶ区間を建設するための資金調達の目処は依然として立っておらず、2023年プロジェクトアップデート報告書では、先行開業区間以外の具体的な開業時期は示されていません。
同報告書によると、フェーズ1全体の事業費は、当初の見積もりである330億ドルから最大で1,280億ドルまで膨らむと予想されており、これは、現在連邦政府が高速鉄道向けに確保している補助金を全て合わせても足りない額となっています。したがって、今後、どのような枠組みを活用して資金調達を達成できるかが最大の課題となっています。また、フェーズ1の完成見通しがついていない現状からすると、フェーズ2の環境アセスメント(Tier 2 EIS)の開始はかなり先になると思われます。
※1米ドル=138円で計算
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