ロンドンの新たな大動脈「エリザベス線」が5月24日に誕生!東西直通運転は秋から開始

ロンドン交通局(Transport for London: TfL)は、2009年から建設を進めているロンドン中心部パディントン(Paddington)とアビーウッド(Abbey Wood)を結ぶ新線「エリザベス線(Elizabeth Line)」の運行を5月24日から開始します。同線は、総工費およそ3兆円をかけて「グレート・ウェスタン本線(Great Western Main Line)」と「グレート・イースタン本線(Great Eastern Main Line)」をロンドン中心部で直通させ、ロンドンの東西を結ぶ全長約118kmの鉄道大動脈を構築する「クロスレール(Crossrail)」プロジェクトの新線区間として整備されました。なお、現在「TfLレール(TfL Rail)」として運行されている列車についても、今回の新線開業と同時にエリザベス線に改称されますが、直通運転が開始されるのは今秋以降となります。

Source: Crossrail

エリザベス線(クロスレール)の概要
エリザベス線(クロスレール)の新線区間
Image: TfL

エリザベス線(クロスレール)は、ロンドン市街地を東西に横断する全長約21kmの地下トンネルを建設し、パディントン駅付近でグレート・ウェスタン本線(Great Western Main Line)」、ストラトフォード駅付近で「グレート・イースタン本線(Great Eastern Main Line)」と接続させ、これらの路線との直通列車を走らせる鉄道プロジェクトです。

エリザベス線(クロスレール)の路線図(ピンク色のラインはトンネル区間)
Image: TfL

直通列車の運行区間は西側はレディング(Reading)およびヒースロー空港まで、東側はシェンフィールド(Shenfield)および今回新線として開業するアビーウッドまでとなっています。なお、クロスレールの既存路線を使用する区間においては、2015年にリバプールストリート〜シェンフィールド間、2018年にパディントン〜ヒースロー空港間、2019年にパディントン〜レディング間が暫定的にTfLレールとしての運行を開始しています。今回、新線区間においてエリザベス線としての運行が開始されるのに合わせ、TfLレールもエリザベス線に改称されることになります。

2022年5月24日以降の運行体系
Image: TfL

5月24日の暫定開業においては、エリザベス線は以下の3系統で運行されることになります。なお、新線区間となるパディントン〜アビーウッド間では6:30〜23:00の終日(日・祝日は終日運休)にわたり毎時12本の列車が運行されます。その他の現在TfLレールとして運行されている区間では、これまで通りのスケジュールで運行されます。

  • レディング〜パディントン(グレート・ウェスタン本線)
  • ヒースロー空港〜パディントン(グレート・ウェスタン本線)
  • パディントン〜アビーウッド
  • シェンフィールド〜リバプールストリート(グレート・イースタン本線)
2022年秋以降の運行体系
Image: TfL

今年秋からはいよいよ既存路線区間から新線区間への直通運転が始まり、以下の暫定運行パターンでの運行が開始されます。直通運転の開始に伴い、パディントン〜ホワイトチャペル間では、毎時最大20本の列車が運行されます。

  • レディング〜アビーウッド
  • ヒースロー空港〜アビーウッド
  • シェンフィールド〜パディントン
2023年5月(予定)以降の運行体系
Image: TfL

2023年5月(早まる可能性もあり)からは本格開業となり、全区間での直通列車の運行が始まります。また、本格運用の開始と同時にエリザベス線の本領が発揮されることとなり、パディントン〜ホワイトチャペル間において最大毎時24本の列車が運行されることとなります。

  • レディング〜アビーウッド
  • レディング〜シェンフィールド
  • ヒースロー空港〜アビーウッド
  • ヒースロー空港〜シェンフィールド

Source: TfL

エリザベス線の開業でヒースロー空港とロンドン東部への所要時間が大幅に短縮
エリザベス線の本格運用開始時(2023年5月以降)の運行体系
Image: Transport for London

エリザベス線の新線区間への直通運転が開始される今年秋以降は、ロンドン東部のウォーターフロント再開発エリアで金融センターでもある「カナリーワーフ」からヒースロー空港までが39分(現状は55分)で結ばれます。以下は、秋以降に開始される直通運転列車でのヒースロー空港から主要駅までの所要時間です。

  • ヒースロー空港〜ボンドストリート:26分
  • ヒースロー空港〜ファリンドン:30分
  • ヒースロー空港〜リバプールストリート:32分
  • ヒースロー空港〜カナリーワーフ:39分

Source: Canary Wharf

エリザベス線の新線区間に誕生する駅
パディントン(Paddington)
  • ベーカールー線(Bakerloo Line)
  • サークル線(Circle Line)
  • ディストリクト線(District Line)
  • ハマースミス&シティー線(Hammersmith & City Line)
  • ナショナルレール(National Rail)

Image: Crossrail

ボンドストリート(Bond Street) ※2022年末開業予定
  • サークル線(Circle Line)
  • ジュビリー線(Jubilee Line)

Image: Crossrail

トテナムコートロード(Tottenham Court Road)
  • セントラル線(Central Line)
  • ノーザン線(Northern Line)

Image: Crossrail

ファリンドン(Farringdon)
  • サークル線(Circle Line)
  • ハマースミス&シティー線(Hammersmith & City Line)
  • ガトウィック空港方面(Trains to Gatwick)
  • ルートン空港方面(Trains to Luton)
  • ナショナルレール(National Rail)

Image: Crossrail

リバプールストリート(Liverpool Street)
  • セントラル線(Central Line)
  • サークル線(Circle Line)
  • ハマースミス&シティー線(Hammersmith & City Line)
  • メトロポリタン線(Metropolitan Line)
  • ノーザン線(Northern Line)
  • ロンドン・オーバーグラウンド(Overground)
  • ガトウィック空港方面(Trains to Gatwick)
  • ルートン空港方面(Trains to Luton)
  • ナショナルレール(National Rail)

Image: Crossrail

ホワイトチャペル(Whitechapel)
  • ディストリクト線(District Line)
  • ハマースミス&シティー線(Hammersmith & City Line)
  • ロンドン・オーバーグラウンド(Overground)

Image: Crossrail

カナリーワーフ(Canary Wharf)
  • ジュビリー線(Jubilee Line)
  • ハマースミス&シティー線(Hammersmith & City Line)
  • ドックランズ・ライト・レイルウェイ(Docklands Light Railway: DLR)

Image: Crossrail

カスタムハウス(Custom House)
  • ドックランズ・ライト・レイルウェイ(Docklands Light Railway: DLR)

Image: Crossrail

ウーリッジ(Woolwich)
  • ドックランズ・ライト・レイルウェイ(Docklands Light Railway: DLR)
  • ナショナルレール(National Rail)

Image: Crossrail

アビーウッド(Abbey Wood
  • ナショナルレール(National Rail)

Image: Crossrail

エリザベス線で使用される車両(クラス345)

エリザベス線(クロスレール)には、アルストム・アヴェントラ(Alstom Aventra)が使用されます。アヴェントラは、旧ボンバルディアがエレクトロスター(Electrostar)の後継車両として開発した通勤車両で、エリザベス線用にはこれまでに630両(9両編成70本)が製造されました。エリザベス線の他にも、ロンドン・オーバーグラウンド(クラス710)など複数の運行事業者によってアヴェントラが導入されています。

エクステリア

Image: Crossrail

先頭車には流線型のスタイルが採用されており、カラーリングはエリザベス線のカラーであるパープルを基調に、先頭部分や窓周りはブラック、ドアや天井部分はホワイトに塗装されています。なお、エリザベス線は架線集電方式が採用されているため、ロンドン地下鉄の他の車両とは異なりパンタグラフが設置されています。

インテリア

Image: Crossrail

シートにはエリザベス線のカラーであるパープルが採用されており、LED間接照明とダウンライトが落ち着いた車内空間となっています。車内情報案内ディスプレイは、ドア上ではなく天井に枕木方向に設置するタイプとなっているほか、4Gや無料WiFiも利用可能です。

車両スペック
運行者TfL(Transport for London)
※運行事業者は香港鉄路有限公司(MTR Corporation Limited)
製造者ボンバルディア(現アルストム)
導入編成70編成(9両編成70本)
車両番号345001–345070
定員1,500人(450席)
営業開始2018年〜
運行路線2018年〜:TfLレール、2022年〜:エリザベス線
運行区間レディング/ヒースロー空港〜シェンフィールド/アビーウッド
設計最高速度145km/h
制御方式IGBT-VVVFインバータ制御

Source: Crossrail

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