新年あけましておめでとうございます。2021年のアメリカは、引き続きパンデミックの影響を受けながらも、その先を見据えた大型インフラプロジェクトが始動した年でもありました。オミクロン株の感染拡大が広まる中ではじまった2022年ですが、今年はパンデミックの影響で遅れていた複数の大型鉄道プロジェクトが完成を迎える他、複数の高速鉄道プロジェクトの着工が期待される年でもあります。それでは、筆者が注目している2022年に開業または着工などが予定されているアメリカの鉄道関連プロジェクトを、エリア別に見ていきましょう。
北東部(ノースイースト)
ワシントンメトロ、シルバーラインがダレス空港まで延伸
現在、開業前の試運転が行われているワシントンメトロ、シルバーラインのワシントン・ダレス国際空港への延伸区間が2月に開業する予定です。これにより、長年の悲願であったアメリカの首都ワシントンD.C.の空の玄関口とダウンタウンなどが鉄道でダイレクトに結ばれることになります。
※2022年夏以降に延期
ロングアイランド鉄道、イースト・サイド・アクセスが開通
イースト・サイド・アクセス(East Side Access)は、ロングアイランド鉄道をグランドセントラル駅へ直通させる巨大インフラプロジェクトです。同線では、すでに営業車両を使用した試運転が実施されており、このまま順調に進めば今年12月に開通する予定です。同線の開通でグランドセントラル駅からJFK空港などへのアクセスが大幅に改善されることになります。
アムトラック、新型アセラの運行開始
2021年の運行開始予定から1年遅れとなりましたが、アムトラックのフラッグシップ列車である「アセラ(Acela)」にアルストム製造の新型車両「アヴェリア・リバティ(Avelia Liberty)」が導入されます。具体的な運行開始日はまだ発表されていませんが、アムトラックの新時代の幕開けにふさわしい新車両が誕生することになります。
※2023年秋に延期
ニューヨーク地下鉄、次世代車両R211形が運行開始
ニューヨーク地下鉄の最新車両「R211形」の運行が開始されます。R211形は、川崎重工の米国現地法人「Kawasaki Rail Car Inc」によって最大1,612両が製造される予定となっています。アメリカの都市鉄道を代表するニューヨーク地下鉄に導入される最新型車両とだけあって、最初の運行路線がどの路線になるのかなど、動向が注目されるところです。
ノースイーストマグレブ、FEISの公表
JR東海が実用化した超電導リニア技術を導入してワシントンD.C.とボルティモア(将来的にはニューヨークまで)を結ぶ高速鉄道計画の環境アセスメント最終評価書(FEIS)が公表される予定です。アメリカの高速鉄道計画は、長期に渡って多くのプロジェクトが計画されてきたものの、実現には多くのハードルがあり頓挫するものがほとんどです。このノースイーストマグレブもFEISの結果次第では、プロジェクトが中止になる可能性もありますが、プロジェクトが前進することを期待したいと思います。
西部(ウェスト)
LAメトロ、リージョナル・コネクターの開通
リージョナルコネクター(Regional Connector)は、ロサンゼルスの広範囲をカバーするライトレール路線をダウンタウンで接続させるプロジェクトで、開業は今年夏ごろを予定しています。同線が完成することで、サンタモニカ、パサデナ、ロングビーチ、イーストロサンゼルスといった広範囲のエリアを乗り換えなし、または1回の乗り換えで移動できるようになります。
LAメトロ、Kラインの開通
Kライン(Crenshaw/LAX Line)は、Eラインのエキスポ・クレンショー(Expo/Crenshaw)駅からロサンゼルス国際空港(LAX)付近をとおり、現在のC(グリーン)ラインへと乗り入れるライトレール路線です。Kラインは、11月にエキスポ・クレンショー駅〜ウェストチェスター・ベテランズ(Westchester/Veterans)駅間の部分開業が予定されています。なお、LAXの各ターミナルへのアクセスを含めたプロジェクト全体の完成は2024年を予定しています。
ブライトラインウェスト、ラスベガス〜ビクターバレー間が着工?
ブライトラインウェストは、ラスベガスとロサンゼルスを結ぶ民間による高速鉄道計画です。このうち、ラスベガスからカリフォルニア州ビクターバレー(Victor Valley)までの区間が2021年に着工される予定でしたが、2022年に延期になりました。はたして今年着工することができるのか注目されます。
中西部(ミッドウェスト)
アムトラック、シーメンス・ベンチャー客車の運行開始
アムトラック・ミッドウェストは、2023年までに88両の新型客車「シーメンス・ベンチャー(Siemens Venture)」の導入が予定されています。今年から、その新型客車の運行がシカゴ〜セントルイス間のリンカーン・サービスから開始される予定です。アムトラックでは、他のエリアにおいてもこのベンチャー車両で旧型客車の置き換えを計画しているため、ミッドウェストに投入されるベンチャーが次世代アムトラックのインターシティ列車のスタンダードになるのか注目されます。
南東部(サウスイースト)
ブライトライン、新駅が開業
マイアミとウェストパームビーチを結ぶアメリカ初の民間インターシティ鉄道「ブライトライン(Brightline)」に、ボカラトン(Boca Raton)およびアベンチュラ(Aventura)駅の2駅が誕生する予定です。なおブライトラインでは、2023年にオーランド国際空港までの延伸開業が予定されており、この区間が完成するといよいよ最高時速200km運転が開始され、アメリカ初の民間高速鉄道の誕生となります。
南西部(サウスウェスト)
テキサスセントラル、ダラス〜ヒューストン間の高速鉄道が着工?
急成長が続くテキサス州の2大都市、ダラスとヒューストンを日本の新幹線技術を使用した高速鉄道で結ぶ「テキサスセントラル鉄道(Texas Central Railway)」が着工される予定です。テキサスセントラル鉄道は、日本のフル規格新幹線同様、既存の鉄道路線とは完全に分離した高速鉄道新線として建設される路線となります。ただ、高速鉄道の建設に反対する地権者などからの訴訟問題などを抱えており、まだ余談を許さない状況となっています。
以上、筆者が独断でピックアップした今年注目されるアメリカの鉄道プロジェクトとなります。それでは、2022年もアメリカの公共交通関連の話題を中心に情報を発信していきますので、今年も「DenshaDex」をどうぞ宜しくお願いいたします。
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