英国では、ロンドンとバーミンガム、マンチェスターなどを最高速度360km/hで走行可能な高速鉄道専用線で結ぶインフラプロジェクト「ハイスピード2(High Speed 2: HS2)」の整備が進められています。HS2は現在、2029〜2033年ごろの開業を目指してロンドンとミッドランド西部を結ぶ区間(フェーズ1)の建設が進められており、同区間には4つの個性的な新駅が誕生する予定です。その中において、ロンドンに次ぐ都市圏人口を抱えるバーミンガムの中心部に整備される「バーミンガム・カーゾン・ストリート(Birmingham Curzon Street)」駅は、19世紀以降に整備される英国の鉄道ターミナルとして最大の規模を誇る新駅となります。なお、HS2が開業すると同駅からロンドンまでは約52分、マンチェスターまでは約41分で結ばれることになります。
バーミンガム・カーゾン・ストリート駅の概要
場所
HS2のバーミンガム・カーゾン・ストリート駅は、かつてのロンドン・バーミンガム鉄道 (L&BR) のターミナル、旧カーゾン・ストリート駅の跡地に建設されます。なお、同駅に隣接する場所にはバーミンガム中心部の主要駅の一つであるバーミンガム・ムーア・ストリート(Birmingham Moor Street)駅があります。
規模
バーミンガム・カーゾン・ストリート駅の開発エリアの敷地面積は約141万平方メートル(駅周辺の開発用地含む)となっており、同駅整備に合わせて実施される再開発ではオフィス(42万m2)、商業施設(10万m2)、ホテル(6万m2)、住宅(4,000戸)などが整備される予定です。
同駅には、最大16両編成のHS2列車が使用する4面7線の高架ホームが整備されます。
接続路線
バーミンガム・カーゾン・ストリート駅の開業を見据えて「ウェスト・ミッドランズ・メトロ」の路線が同駅まで延伸される予定です(Eastside Metro Extension)。また、現在ウェスト・ミッドランド・トレインズ(West Midlands Train)およびチルターン・レイルウェイズ(Chiltern Railways)が乗り入れているバーミンガム・ムーア・ストリート駅とはデッキで結ばれる予定となっています。さらに、同駅から400mほど離れた場所にあるバーミンガム・ニュー・ストリート駅についてもスムーズな乗り換えができるよう検討されています。
Source: HS2、WSP、Curzon Street Station Design
駅のデザイン(2018年10月時点のもの)
駅舎外観
駅舎外観の全体イメージです。
コンコースはアーチ型ドーム屋根の建物内と高架ホーム下の東西2ヶ所に整備されます。なお、駅の全長は約477mあります。
バーミンガム・ムーア・ストリート駅に近い西側エントランス前に整備されるステーション・スクエア(Station Square)のイメージです
西側エントランスの拡大イメージです。非常にインパクトのある巨大なアーチ型ドーム屋根がバーミンガムを訪れる人を迎えてくれることになります。
バーミンガム・ムーア・ストリート駅と接続するペデストリアンデッキのイメージです。
アーチ型の大屋根にはインターチェンジ駅同様に雨水を効率よく回収して再利用できる仕組みが採用されます。また、ホーム屋根上には2,800平方メートルを超える広さの太陽光パネルが設置されます。
高架下に整備される東側エントランス付近のイメージです。駅周辺には多くの緑地が整備されるほか、駅舎の北側にはカーゾン・プロムナード(Curzon Promenade)と呼ばれる歩行者および自転車専用のエリアが整備されます。
東側エントランスは高架下の空間が活用されるため西側ほどの華やかさはありませんが、モダンなLED照明などによって機能的かつ温かみのある空間としてまとめられている印象です。
東側エントランスには歴史的建造物として一部保存されている旧カーゾン・ストリート駅の駅舎があり、ビジターセンターなどとして活用される予定です。
コンコース内部
アーチ型ドーム屋根が美しいコンコース内部のイメージです。
他のHS2の駅同様に自然光が多く取り入れられて開放感のあるコンコース空間が誕生します。
高架下のコンコース内のイメージです。
地上ホーム
メインコンコース内の改札内にある各ホームへの入り口です。非常に開放感のある大空間は鉄道駅というよりも国際空港を連想させます。
ホームのイメージです。エスカレーターの上は吹き抜けとなっておりこちらも開放感があります。
別のアングルから見た吹き抜けのイメージです。ドーム屋根の高さは約35mあるので、かなりのスケールとなりそうです。
ホームに停車するHS2車両(実際のもととは異なる)のイメージです。
高架下コンコースへと向かうエスカレーターの様子です。
ライトレール
東側エントランスにはウェスト・ミッドランズ・メトロが乗り入れる計画で、市内各所へのスムーズなアクセスが可能となります。
参考:HS2バーミンガム・カーゾン・ストリート駅(2018年10月)
駅名 | バーミンガム・カーゾン・ストリート(Birmingham Curzon Street) |
住所 | – |
駅構造 | 高架駅 |
ホーム | 4面7線※ホーム長400m以上 |
敷地面積 | 約48,455平方メートル(※駅エリア) 141万平方メートル(※駅周辺の開発エリアを含む) |
接続路線 | チルターン本線(Chiltern Main Line) ウェスト・ミッドランズ・メトロ(West Midlands Metro tram) |
接続列車 | ※ムーア・ストリート(Moor Street )駅で乗り換え チルターン・レイルウェイズ(Chiltern Railways) ウェスト・ミッドランズ・トレインズ(West Midlands Trains) |
事業主 | HS2 Ltd. |
設計者 | WSP and Grimshaw Architects LLP |
施工者 | Mace Dragados Joint Venture (MDJV) |
着工 | 2023年(駅舎本体)※基礎工事などは2018年から開始 |
完成予定 | 2029-2033年(営業運転開始) |
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