マンハッタンとニューヨーク市北部地域やコネチカット州の各都市などを結ぶメトロノース鉄道(Metro-North Railroad)は、全米第2位の輸送量を誇る通勤鉄道路線です。現在、メトロノース鉄道を傘下に置くMTAは、総工費およそ32億ドル(約4,140億)をかけて、アムトラックが保有するペン・ステーションと同鉄道ニューヘイブン線(New Haven Line)のニューロシェル(New Rochelle)駅付近を結ぶ「ヘルゲート線(Hell Gate Line)」を改良し、同線の一部列車を「ペンシルバニア駅(通称ペン・ステーション: Penn Station)」へ直通させるプロジェクト「ペンステーション・アクセス(Penn Station Access)」を進めています。

クイーンズ・アストリア付近のヘルゲート橋を渡るメトロノース鉄道のM8形電車のイメージ
Image: MTA

Source: MTAPenn Station Access project documents

※1米ドル=129円で計算

プロジェクトの背景・目的

メトロノース鉄道は、マンハッタンへ直通する路線としてニューヘイブン線(New Haven Line)、ハドソン線(Hudson Line)、ハーレム線(Harlem Line)の3路線を運行していますが、すべて「グランド・セントラル駅(Grand Central Station)」がターミナルとなっており、アムトラック(Amtrak)、ニュージャージー・トランジット(New Jersey Transit)、ロングアイランド鉄道(Long Island Railroad)、地下鉄、パストレイン(PATH)などが乗り入れ、北米最大の利用者数を誇るペン・ステーションへの乗り入れは実施されていません。

メトロノース鉄道の路線図
Image: MTA

このため、メトロノース鉄道のペン・ステーション乗り入れについては、既存のアムトラックの線路を活用した計画がかなり以前から検討されてきました。しかし、ペン・ステーションの容量の関係などから実現されていませんでした。ところが、ロングアイランド鉄道の一部列車をグランド・セントラル駅へ乗り入れさせるイースト・サイド・アクセス(East Side Access)が建設されることが決まり(2023年1月25日開業)、ペン・ステーションの容量に余裕が生まれることになったため、ニューヘイブン線の一部列車をペン・ステーションへ乗り入れさせるペンステーション・アクセスの整備が進められることとなりました。

ペンステーション・アクセスが完成すると、ニューヘイブン線沿線からペン・ステーションへ乗り換えなしでアクセスできるようになり、コネチカット州各都市からマンハッタンのウェウスサイドやニューアーク国際空港などへのアクセスが改善されることが期待されています。さらに、ペンステーション・アクセスがとおるイースト・ブロンクス(East Bronx)エリアに4つの新駅が建設される予定で、同エリアからペン・ステーションやスタンフォード(Stamford)への所要時間が大幅に短縮されることになります。

ペンステーションアクセスの整備で設置される新駅のイメージ
Image: MTA

なお、ペンステーション・アクセスの整備については、アムトラックのエンパイア・コネクション(Empire Connection)を活用してハドソン線の一部列車をペン・ステーションに乗り入れさせる第2期計画もありますが、ここでは現在すでに着工されている第1期計画のみを紹介します。

ペンステーション・アクセス(第1期)のルート
黄色のラインで示されたアムトラック北東回廊の一部であるヘルゲート線をペンステーションアクセスとして活用
Image: MTA

ペンステーション・アクセスは、ペンステーションからメトロノース鉄道ニューヘイブン線のニューロシェル駅付近を結ぶ既存のヘルゲート線(Hell Gate Line)を改良する形で整備されます。ヘルゲート線は現在、アムトラックの高速列車アセラ(Acela)やノースイーストリージョナル(Northeast Regional)などが使用する北東回廊(Northeast Corridor)の一部となっているほか、貨物列車なども同線を使用しています。

Image: MTA

具体的な整備として、ヘルゲート線の19マイル以上の区間において、橋梁、分岐ポイント、変電所、信号・電気設備などの新設または改修工事を含む大規模な路線改良が実施されるほか、新駅の設置、および一部区間の複々線化も実施されます。また、クイーンズの一部区間では、電化方式がメトロノース鉄道の車両に対応していないため第三軌条が新たに整備されます。

イースト・ブロンクスに誕生する4つの新駅
ハンツポイント(Hunts Point)
Image: MTA

ハンツポイント駅周辺は、およそ36,000人が住むレジデンシャルエリアとなっており、地下鉄6系統と接続します。当駅の開業によって、同エリアからペン・ステーションまでの所要時間が29分短縮され16分に、スタンフォード(Stamford)までが33分短縮され47分になります。

Image: MTA

同駅は、島式ホーム1面2線の構造となり、外側に主にアムトラックが使用する旅客線1線と貨物線2線が並走するかたちで整備されます。

パークチェスター・バンネスト(Parkchester/Van Nest)
Image: MTA

パークチェスター・バンネスト駅周辺の人口はおよそ43,000人となっています。当駅の開業によって、同エリアからペン・ステーションまでの所要時間が40分短縮され20分に、スタンフォードまでが43分短縮され42分となります。

Image: MTA

同駅付近からは複々線区間となり、島式ホーム1面2線の外側に主にアムトラックが使用する旅客線2線が並走する形で整備されます。

モリスパーク(Morris Park)
Image: MTA

モリスパーク駅周辺は、13,000人以上の人が働く医療関連施設が集中しているエリアとなっています。当駅の開業によって、同エリアからペン・ステーションまでの所要時間が35分短縮され25分に、スタンフォードまでが55分短縮され40分になります。

Image: MTA

同駅付近は島式ホーム1面2線の外側に主にアムトラックが使用する旅客線2線が並走する形の複々線区間となります。

コープシティ(Co-op City)
Image: MTA

コープシティ駅周辺は、およそ50,000人が暮らすエリアとなっています。当駅の開業によって、同エリアからペン・ステーションまでの所要時間が50分短縮され25分に、スタンフォードまでが73分短縮され37分になります。

Image: MTA

同駅は島式ホーム1面2線の外側に主にアムトラックが使用する旅客線2線が並走する形で整備されますが、同駅からニューヘイブン線に合流するニューロシェル駅付近までは複線区間となるため、メトロノース鉄道の列車は当駅のコネチカットよりでアムトラックの線路に合流することになります。

使用車両
メトロノース鉄道ニューヘイブン線で使用される川崎車両製のM8形車両
Image: Lexcie (CC BY-SA 3.0). Wikimedia Commons.

ペンステーション・アクセスでは、2011年から運行を開始した川崎車両製のM8形電車が使用される予定です。同車両は、第三軌条方式と架空電車線方式が混在するニューヘイブン線用の車両として投入されたため、パンタグラフと集電靴の2種類の集電装置が装備されているのが特徴となっています。このため、一部区間が第三軌条方式となるペンステーション・アクセスにおいても、両方の集電装置が活用されることになります。

開通後の運行スケージュール

ペンステーション・アクセス開通後は、ニューヘイブン(New Haven)駅からペン・ステーションの間で直通運転が開始され、ニューヘイブン線から1日102本の列車がペン・ステーションへ乗り入れる計画となっています。また、アムトラックのインターシティ列車も1日60本に増発される予定です。なお、ニューヨーク版の湘南新宿ラインともなりうる、ニュージャージー方面との相互直通運転構想もあるようですが、電化方式の違いからメトロノース鉄道の車両がペン・ステーション以西へ乗り入れることができないなどの問題があり、現時点では具体的な計画は示されていません。

今後の予定
Image: MTA

ペンステーション・アクセスは、すでに一部ポイントの新設工事などが2022年に着工されています。また、来年以降からは新駅の建設工事なども本格化する予定で、予定通りに工事が進めば2027年に開通する予定です。

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