アムトラック(Amtrak)は19日、車内から絶景を楽しめることで知られるカリフォルニア・ゼファー(California Zephyr)やエンパイア・ビルダー(Empire Builder)など、14路線を運行している長距離列車の車両更新を進めるため、車両調達に向けた準備作業を開始したと発表しました。同社は今年4月に公表された「2022〜2027年の5ヶ年計画(Five-Year Plans)」において、老朽化が進む長距離列車向けの車両を2020年代後半から順次新型車両に置き換える方針を示しており、現在、長距離列車用車両として保有している合計744両(リース車両含む)の車両のうち、2014〜2021年にかけて増備されたビューライナー2(Viewliner II)130両を除く全ての車両が更新対象となる予定です。
なお、同社は今年後半にも入札に向けた車両調達の概要を取りまとめる予定で、車両購入費は2021年に成立したインフラ投資・雇用法から資金提供される見通しとなっています。
Source: Amtrak
どんな車両・設備が導入される?
アムトラックの長距離列車では、始発から終点までを3日以上かけて走る列車も多いため、シャワー付き寝台個室のベッドルーム(Bedroom)、寝台個室のルーメット(Roomette)、家族向けのファミリールーム(Family Room)、普通席(Coach)、カフェ、さらに厨房を備えた食堂車やラウンジカーなど、時代は感じさせられますが充実した車内設備が提供されています。
しかし、アムトラックの長距離列車は長年にわたりすべて赤字運行となっており、近年では長距離の利用客が減少し、短・中距離の利用客が増えている状況が続いています。そのため、新型車両の導入にあたっては、今後長期にわたり列車の運行を継続していく上でも、運行コストの削減や実際のニーズに合ったサービスの提供といった点が重要視されると予想されます。
アムトラックではすでにコスト削減の一環として、比較的運行距離の短い長距離列車を中心に、食堂車の厨房を廃止し、フレキシブル・ダイニング(Flexible Dining)と呼ばれる飛行機のエコノミークラスの機内食のようなミールサービスへと変更しています。
このような状況を踏まえアムトラックは、21世紀にふさわしいサービスを提供できるよう新型長距離列車についての市場調査を進めており、既存車両同様に2階建車両にするかも含めて、車内設備を1から検討するとしています。そのため、現在のような寝台設備、ラウンジカー、ランニングコストの高いフルサービスの食堂車といったサービスが今後も継続されるのかについては、特に注目されます。
なお車両入札には、アムトラックの次世代インターシティ車両「AMTRAK AIRO」を製造するシーメンスも参加すると予想されるため、アメリカの鉄道車両に求められる車体強度を満たした同型車をベースに、同社がオーストリア連邦鉄道向けに製造した「ナイトジェット」のように多様なニーズに対応する車内設備を備えた寝台車両ということも十分ありえそうです。いずれにせよ、車両メーカー側からどのような提案が出されるのか気になるところです。
Source: How Do Long Distance Trains Perform Financially?
参考:現在の長距離列車車両の設備
今回、新型車両への置き換えが決まったスーパーライナーおよびビューライナー1については、今後10年程度は引き続き使用し続けることになるため、2021年からおよそ3年をかけてリニューアルが実施される予定となっています。以下は、リニューアル後の車内設備のイメージです。
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