アムトラック、2020年代後半から長距離列車に新型車両を導入!

アムトラック(Amtrak)は、今年4月に公表された「2022〜2027年の5ヶ年計画(Five-Year Plans)」において、老朽化が進む長距離列車向けの車両を順次新型車両に置き換える予定であることを明らかにしました。新型車両への置き換えは、2020年代後半から2030年前半にかけて実施される予定で、現在同社が保有する合計744両(リース車両含む)の長距離列車用車両のうち、2014〜2021年にかけて増備されたビューライナー2(Viewliner II)130両を除く全ての車両が対象となります。なお、新型車両が既存車両と同じ2階建て車両として導入されるかなど、詳細についてはまだ決まっておらず、今年度から開始される市場調査や各長距離列車の特性などを踏まえた上で決定される予定です。

車窓からロッキーマウンテンの雄大な大自然を楽しむことができるカリフォルニア・ゼファー号
Image: Amtrak

アムトラックは近年、老朽化が進む車両の更新を積極的に進めており、2023年には北東回廊の高速列車「アセラ」に新型車両がデビューする予定のほか、2025年以降には北東回廊発着の中距離列車やパシフィック・ノースウェストのカスケーズなどに新型車両を投入する予定となっています。また、シカゴを中心とする中西部や北カリフォルニアで運行されている中距離列車についても、州政府による車両更新が進められています。

長距離列車用の新型機関車(ALC-42)
Image: Amtrak

長距離列車の車両については、2022年2月より新型機関車(ALC-42形)の導入が進められており、今回明らかになった客車の新造計画が完了する2030年代前半には、1971年のアムトラック設立後に導入された車両がほぼ一新されることになります。

アムトラックの長距離列車向け車両数(2022年4月時点)
シカゴ発着の大陸横断列車や西海岸の長距離列車を中心に使用されるスーパーライナー
Image: Chris Light (CC BY-SA 4.0). Wikimedia Commons.

2022年4月時点において、アムトラックは合計744両の長距離列車向け車両を保有またはリースしており、その平均車齢は25年以上となっています。また、このうち半数はすでに車齢約40年以上で、車両更新が始まる2020年代後半には車齢50年に達するものも出てくることになります。

北東回廊における車両限界の関係で主にニューヨーク発着の長距離列車に使用されるビューライナー(写真の後ろ2両はビューライナー2で今回の置き換え対象外)
Image: Fan Railer (CC BY-SA 4.0). Wikimedia Commons.
車両保有数製造年車両メーカー使用列車
スーパーライナー1
(Superliner I)
266*1979〜1981年Pullman-Standardオート・トレイン
キャピトル・リミテッド
コースト・スターライト
エンパイア・ビルダー
カリフォルニア・ゼファー
サウスウェスト・チーフ
サンセット・リミテッド
テキサス・イーグル
シティ・オブ・ニューオーリンズ
スーパーライナー2
(Superliner II)
1861993〜1996年Bombardier同上
ビューライナー1
(Viewliner I)
501995〜1996年Morrison-Knudsenパルメット
クレセント
シルバーサービス
レイクショア・リミテッド
カーディナル
ビューライナー2**
(Viewliner II)
1302014〜2021年CAF同上
※Baggage Car、Baggage Dorm Carは全路線で運行
アムフリート2
(Amfleet II)
1421981〜1983年Budd同上および以下の路線
メープル・リーフ
アディロンダック
ペンシルバニアン
*リース車両も含む
**今回の車両更新の対象外
Source: Five-Year Plans
車両メーカーはどうなる?

2022〜2027年の5ヶ年計画によると、長距離列車向けの新型車両については今年度から車両の基本仕様などを決めるための市場および技術調査などを実施するための準備に入り、その後入札によって車両メーカーが決定される予定となっています。

Image: Five-Year Plans

なお、アムトラックが保有する長距離列車の車両を製造した車両メーカーのうち、CAF以外は全て鉄道車両事業から撤退しており、バッドやプルマンはのちにボンバルディアに、またボンバルディアは2021年にアルストムに吸収合併されています。また、今後導入されるアムトラックの新型車両のうち、アセラの新型車両はアルストム(Alstom)が、中距離列車向けの車両および機関車についてはシーメンスが受注しています。したがって、アルストムやシーメンスが有力候補となる可能性は高そうです。

日本車輌が2階建車両として製造する予定だったカリフォルニア向けのアムトラック車両(シーメンス・ベンチャー)
Image: California Department of Transportation (CC BY-SA 4.0) Wikimedia Commons.

ここで気になるのが日本の車両メーカーの動向ですが、過去に米国における2階建車両の製造を得意としていた日本車輌は、カリフォルニアおよび中西部向けのアムトラック車両を受注した際に、アメリカの衝突を前提とした厳しい安全基準やバイアメリカン法が高いハードルとなり、米国事業からの撤退を余儀なくされてしまいました。

米国市場から撤退してしまった日本車輌製の2階建車両(カルトレイン用)

そのため、他に米国に拠点を設けている日本の車両メーカーは、川崎車両、近畿車輛、日立の3社ということになります。なかでも、ニューヨーク市地下鉄をはじめアメリカの鉄道車両の納入実績が豊富な川崎車両と、先月メリーランドでワシントンメトロの新型車両を製造する新工場の建設を開始するなど、北米マーケットの開拓を進めている日立の動向が注目されます。ただ、両社ともアムトラックの長距離列車車両の納入実績がないため、入札においてアムトラックがどのような仕様を提示してくるかが鍵となりそうです。

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