ドイツ鉄道(Deutsche Bahn: DB)は、9月20日〜23日にドイツ・ベルリンで開催された世界最大の鉄道見本市「イノトランス2022(InnoTrans 2022)」において、「アイデアズトレイン(IdeasTrain: ドイツ語はIdeenzug)」コンセプトを実証するためのプロトタイプ車両を披露しました。アイデアズトレインは、近年のドイツにおける鉄道利用需要の高まりを受けて、DBレギオ(DB Regio)などが2016年に立ち上げたプロジェクトで、既存概念に捉われないイノベーティブな鉄道車両を開発することで、時代のニーズに合った鉄道サービスを提供することを目的としています。現在、同プロジェクトでは、通勤列車用の「IdeasTrainCity」と近郊列車(主にS-Bahn)用の「IdeasTrainRegio」の2つのコンセプトが存在しますが、今回披露されたプロトタイプ車両は近郊列車用となります。
このプロトタイプ車両は、2023年3月3日から南東バイエルン鉄道(Southeast Bavarian Railway: ドイツ語はSüdwestbayernbahn)のミュンヘンからバイエルン州東部のミュールドルフ・アム・イン郡(Mühldorf am Inn)を結ぶ区間において、実際の営業列車に投入される予定となっており、そこで得られた乗客からのフィードバックを、将来の新型車両の設計などに役立てる計画となっています。
Source: DB、DB Ideenzug
10種類の新車内コンセプト
今回披露されたプロトタイプ車両は既存の2階建車両を改造したもので、以下の10種類の新車内コンセプトが実証されることとなります。
リラクゼーション(Relaxation)
リラクゼーションは、リビングルームのような空間がコンセプトとなっています。座席は一人掛けで景色を楽しみやすいように窓の方向を向いており、非常に贅沢な移動空間となります。
ファミリー(Family)
ファミリーは、子連れの利用者などが快適に利用できる空間として、移動中にゲームを楽しめるような工夫が施されています。
コンフォート(Comfort)
コンフォートは飛行機のビジネスクラスのような座席となっており、電動リクライニングのほか、大型のヘッドレストやバックシェルも採用されており、よりプライベートな空間となります。
新シート(New sitting)
新シートは、鉄道車両のシートとしては初の試みとなるメッシュ性のシートが採用されており、背中への負担軽減、夏場の蒸れ防止のほか、シートの軽量化といった効果が期待されます。
レギュラーテーブル(Regular table)
レギュラーテーブルは、バーカウンターのようなテーブルに高めのベンチを配することで、自然とほかの乗客との会話が弾むような空間となるようデザインされています。
オフィス(Office)
オフィスは、開閉可能なドアや27インチのスクリーンを搭載することで、移動時間をハイスペックなワーキングスペースと利用できるよう工夫された空間となります。
コンパートメント(Compartment)
コンパートメントは、プライベート間を高めるために高めの背もたれが採用されており、グループ利用などにも最適なシートとなっています。また、荷物の収納スペースも座席下と座席上の荷棚と多めに設置されています。
コーナーベンチ(Corner bench)
コーナーベンチは、4人ごとに仕切りが設置されたロングシートとなっており、こちらもグループ利用などが想定されています。
旅客インフォメーション(Passenger Information)
乗降ドア付近や車内には合計20のスクリーンが設置され、停車駅案内、ニュース、天気予報といった様々な情報案内が提供されます。また、車内に設置されたカメラを活用して、車内の混雑状況がリアルタイムで確認できるような工夫もされています。
多目的エリア(Multipurpose area)
多目的エリアは、スーツケース、スキー、スノーボードなど、大型の荷物の利用がしやすいよう工夫された空間となっています。
まとめ
今回ドイツ鉄道が披露した新車内コンセプトは、利用者からの要望を徹底的に調査して開発されたコンセプトとなっており、将来のドイツの近郊列車にどのような鉄道サービスが求められているかを垣間見ることができます。2023年3月から開始されるプロトタイプ車両の営業列車投入で、利用者からどのようなフィードバックが得られるのか、今後が注目されます。
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