今月15日、バイデン大統領の署名によって1兆2,000億ドル規模のインフラ投資・雇用法(Infrastructure Investment and Jobs Act)が成立しました。これに続き、バイデン大統領のもう一つの看板政策である、気候変動対策や社会保障への大型歳出法案「ビルド・バック・ベター法案(Build Back Better Act)」が下院において可決されました。この法案の中には、インフラ投資・雇用法とは別に、高速鉄道への支出として5年間で100億ドル(約1兆1,300億円)というものが含まれています(H.R.5376)。今後、上院でこの法案が可決されるかは依然として不透明な状況ですが、仮に可決された場合、全米各地で計画されている高速鉄道プロジェクト間で連邦政府の資金獲得に向けた動きが活発化しそうです。
アメリカの高速鉄道計画
全米各地では、多くの高速鉄道計画が検討されています。しかしながら、車社会、国土が広大で人口分布がまばらなどといった様々な要因から、莫大な資金が必要となるフルスペックの高速鉄道をアメリカで実現するのは非常に難しいのが現状です。オバマ政権時代には、全米各地の高速鉄道プロジェクトを前進させるため、総額80億ドルを投じる景気刺激策が実施されました。しかし、実際に着工されたカリフォルニア高速鉄道ですら、当初の計画からの大幅な変更や遅延を余儀なくされ、前トランプ政権になってからは連邦補助金の返還を求められる事態にまで陥ってしまった経緯があります。
なお、ビルド・バック・ベター法案では対象となる高速鉄道について、在来線と共有する路線の場合は時速160マイル(250km)以上、高速鉄道専用の路線の場合は時速約186マイル(300km)以上で走行する回廊鉄道と定義しています。現在のところ、ある程度実現性が高くこの定義に当てはまるプロジェクトは、着工済みのカリフォルニア高速鉄道のほか、テキサスセントラル鉄道、ブライトラインウェストなどが挙げられるかと思います。ただ、テキサスセントラル鉄道、ブライトラインウェストといった民間事業者によるプロジェクトが連邦政府による支援対象に該当するかは不透明です。
今回の法案が可決された場合、オバマ政権時代と同じことを繰り返さないためにも、どのプロジェクトに重点的に支援を行うかを見極めることは非常に重要なポイントになるかと思います。今後、アメリカの高速鉄道の行方を左右するであろう同法案の動向に注目していきます。
Source: The White House
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