独シーメンス、完成すれば世界第6位の規模となるエジプトの高速鉄道システムを受注

シーメンスモービリティ(Siemens Mobility)は5月28日、オラスコム建設産業(Orascom Construction)およびアラブコントラクターズ(The Arab Contractors)と共同で、エジプトの主要都市を結ぶ総延長約2,000kmにおよぶ高速鉄道ネットワークを整備するプロジェクトを、エジプト国有トンネル公社(Egyptian National Authority for Tunnels: NAT)から受注したと発表しました。この契約のうち、シーメンス担当分の契約金額は、昨年9月に受注した約660kmの路線を含めておよそ81億ユーロ(約1兆1,600億円)にもおよび、これはシーメンスにおける過去最高額の契約となります。

同社は今後、エジプト高速鉄道の実現に向けたシステム構築、プロジェクトマネジメント、信号・通信設備の整備、電化工事、車両新造、発券システムの整備、開業後15年間の保守・メンテナンスなどを実施していくことになります。

Source: Siemens

エジプトで計画されている高速鉄道プロジェクトの概要
Image: Siemens

エジプトの高速鉄道プロジェクトは、最高速度230km/hに対応した3路線が計画されており、合計60の都市が総延長2,000kmおよぶ高速鉄道ネットワークによって結ばれることになります。これら全ての路線が完成するとエジプトの人口のおよそ9割がこの高速鉄道ネットワークにアクセスできるようになります。

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整備される高速鉄道ネットワークでは、高速列車、近郊列車、貨物列車が運行される予定で、運行システムには欧州の統一列車制御システムであるETCSレベル2(European Train Control System: ETCS Level 2)が導入されます。ETCSレベル2は日本のデジタルATCに似た方式ですが、デジタル無線を使用している点が異なります。

路線1

第1期として整備される路線は、昨年9月にシーメンスが受注したもので、スエズ(Suez)の南で紅海に面した港湾都市であるアインソフナ(Ain Sokhna)と地中海に面したマルサマトルーフ(Marsa Matruh)およびアレクサンドリア(Alexandria)を結ぶ約660kmの路線です。途中、エジプト最大の都市カイロの近郊で整備が進む新行政首都(New Administrative Capital)なども経由し、年間3,000万人の利用が見込まれています。また、旅客輸送以外にも紅海および地中海に面した港湾都市と主要都市を結ぶ貨物鉄道としても重要な役割を果たす予定で「鉄道のスエズ運河」とも呼ばれています。第1期の一部区間では早ければ2023年から運行を開始し、全体の完成時期は2027年ごろになると報道されています。

Source: CNN

路線2

今回新たに契約された区間で、カイロ(Cairo)と南部の都市アブシンベル(Abu Simbel)をナイル川に沿う形で結ぶ約1,100kmの路線となります。この路線により、ナイル川沿いにある大小の都市とカイロなどが高速鉄道で結ばれることになります。

路線3

この区間も今回新たに契約されたもので、ルクソール(Luxor)とフルガダ(Hurghada)などを結ぶ約225kmの路線となります。この路線は、世界遺産などの観光資源が豊富なルクソールと紅海に面した港湾都市サファガ(Safaga)を結ぶことで、同エリアの物流の効率化をはかる役割も果たします。

導入される車両
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エジプト高速鉄道では、用途に合わせて高速鉄道車両、近郊形車両、貨物用電気機関車の3種類の車両が導入される計画です。そのうち、高速鉄道車両は328両(8両編成41本)、近郊形車両は376両(4両編成94本)、貨物用電気機関車は41両が製造される予定となっています。

高速鉄道車両(ヴェラロ)
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高速鉄道車両には、ドイツ鉄道の高速鉄道車両である「ICE3」がベースとなっている「ヴェラロ(Velaro)」が導入されます。ヴェラロは日本の新幹線車両と同じく動力分散方式の高速鉄道車両で、ドイツ鉄道以外にもユーロスター、スペインのAVE、トルコ、ロシア、中国などでも導入されており、総走行距離30億km以上の実績があります。

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エジプトに導入されるヴェラロは8両編成で合計41本が導入されます。なお、ヴェラロは営業最高速度360km/hまで対応可能ですが、エジプトに導入される車両は最高速度230km/hで運転される予定です。

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砂漠の中を進む高速列車のイメージです。最高速度230km/hで走る高速列車への砂対策などをどのように行うのかドイツの手腕が問われます。

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近郊形車両(デジロHC)
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近郊形車両には、ヨーロッパを中心に一部アメリカでも採用事例のあるシーメンスのモジュラー式鉄道車両「デジロ(Desiro)」が導入されます。

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エジプト向けに導入される車両は、中間車2両が2階建となっているハイキャパシティバージョン「デジロHC(Desiro HC)」となります。デジロHCは最高速度200km/hまで対応可能なバリエーションがあり、1編成4両が合計94本が導入されます。

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電気機関車(ベクトロン)
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貨物列車牽引用の電気機関車は、2010年に登場したベクトロン(Vectron)が導入されます。ベクトロンは、欧州各国で約800両(受注分も含めると1,000両以上)の導入実績があり、最高速度200km/hへの対応も可能となっています。

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エジプト向けには合計41両が導入されます。

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