イギリスの主要都市リバプール(Liverpool)の都市鉄道ネットワーク「マージーレール(Merseyrail)」では、2022年末から新型電車「クラス777」の運行が開始される予定です。クラス777は、スイスの車両メーカー「シュタッドラー(Stadler Rail AG)」の地下鉄車両ブランド「メトロ(METRO)」をベースにした第三軌条方式の新型電車で、合計53編成を導入して老朽化が進む既存車両全てを置き換える計画です。また、一部の車両は非電化区間への直通運転を想定してバッテリー走行が可能なタイプ(Independent Powered Electrical Multiple Unit: IPEMU)として導入される予定で、既存のインフラを最大限活用しながら都市鉄道の利便性を向上できる車両として注目されています。
クラス777の蓄電池電車仕様(METRO IPEMU)は、電化区間走行時や回生ブレーキから発生する電力などを利用して充電することが可能で、フル充電までにかかる時間はおよそ15分、バッテリーでの最大走行距離は55kmの性能を有しています。なお、バッテリー走行が可能な第三軌条方式電車の導入はイギリス初の事例となります。
Source: Merseyrail
クラス777の導入路線
クラス777は、マージーレールのノーザンライン(Northern Line)およびウィラルライン(Wirral Line)に導入される予定で、両線で現在使用されているクラス507(Class 507)およびクラス508(Class 508)が全て置き換えられる予定です。なお、蓄電池電車はノーザンラインのカークビー(Kirkby)駅とレインフォード(Rainford)駅の間に建設中のヘッドボルト・レーン(Headbolt Lane)駅までの乗り入れが予定されており、将来的には計画中のスケルマーズデール(Skelmersdale)駅、レクサム(Wrexham)、ウォリントン(Warrington)といったエリアへの直通運転を目指しています。
車両デザイン
エクステリア
カラーリングは既存車両と同じくイエローをベースとしたものとなっています。
ブラックフェースが特徴的な前面には3ヶ所にLEDヘッドライトが設置されているほか、マージレールの「M」を表現したLEDライトも設置されており斬新なイメージとなっています。また、このライトはテールライトの役割も果たします。
乗降扉にはホームとの隙間を埋めるための可動式ステップが設置されています。
インテリア
車内はクロスシートが基本となっており、従来の車両と同じ座席数を維持しつつレイアウトなどの工夫により定員を5割増やすことに成功しています。
LED照明や明るいインテリアの採用でモダンで広々とした空間を演出しています。
一部座席は大型手荷物やベビーカーなどの利用も想定して折りたたみ席となっています。また車内ではWiFiも利用可能で、各座席の下にはコンセントおよび充電用USBポートも設置されています。
車内にはリアルタイム情報などが表示される横長の液晶ディスプレイが数カ所に設置されています。なお、心理的な犯罪抑止効果を目的として、ディスプレイの一部では車内監視カメラの映像が映し出されるようになっています。
バリアフリー設備は車椅子用スペースが編成中2ヶ所に設置されています。
ホームとの段差解消のため従来車両よりも低床式となっています。そのため車内の一部に段差が生じていますが、シートレイアウトの工夫とスロープの設置で解決されています。
自転車用スペースは編成中2ヶ所(合計4台分)に設置されています。また、自転車利用がないときには立ち席スペースとして利用できるように立ち席用簡易シートも設置されています。
クラス777の概要
運行事業者 | マージートラベル(Merseytravel)※車両保有者 |
車両メーカー | シュタッドラー・レール(Stadler Rail AG) |
車両ブランド | メトロ(METRO) |
導入編成 | EMU :46編成(4両編成46本) IPEMU:7編成(4両編成7本) |
車両番号 | 777001〜777053 |
定員 | EMU :302人(普通席:182、折りたたみ席:8) IPEMU:302人(普通席:184、折りたたみ席:ー) |
営業開始(予定) | 2022年〜 |
運行路線 | ノーザンライン(Northern line)、ウィラルライン(Wirral line) |
運行区間 | 全区間 |
設計最高速度 | EMU :120km/h(第三軌条方式) IPEMU:120km/h(第三軌条方式)、100km/h(バッテリー走行時) |
制御方式 | IGBT-VVVFインバータ制御 |
Source: Stadler
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