ダウンタウン観光がメインであれば意外と便利?マイアミ国際空港の鉄道アクセスとは

米国南部に位置するフロリダ州最大の都市圏を有するマイアミといえば、一年を通して温暖な気候であることから、有名なマイアミビーチなどをはじめとするリゾートビーチが多いことで知られています。また、マイアミのダウンタウン周辺には、リゾートの雰囲気が味わえるショッピングセンター「ベイサイドマーケットプレイス(Bayside Market Place)」、マイアミの金融街で高級ショップなどが軒を連ねる「ブリッケルシティセンター(Brickell City Centre)」、ルネッサンス様式の豪邸でアメリカ合衆国国定歴史建造物でもある「ビスカヤミュージアム&ガーデンズ(Vizcaya Museum & Gardens)」など、多くの人気観光地があります。そんなマイアミの空の玄関口であるマイアミ国際空港(Miami International Airport: MIA)には、2012年から「メトロレール・オレンジライン(Metrorail / Orange Line)」と「トライレール(Tri-Rail)」という鉄道路線が乗り入れています。

メトロレールのマイアミ国際空港駅

今回、マイアミ国際空港に乗り入れている鉄道路線のうち、メトロレールに乗車する機会がありましたので、同空港の鉄道アクセスの速達性、経済性、利便性、快適性、安全性についてみていきたいと思います。

※情報は2023年10月時点のものです。最新の情報は公式HPなどでご確認ください。

マイアミ国際空港の位置・規模

マイアミ国際空港はマイアミのダウンタウンから13kmほど北西に位置しており、年間およそ2,400万人(2022年)が利用するアメリカで9番目の利用者数を誇る国際空港です。また、アメリカン航空がハブ空港の一つとして使用しているほか、フロリダ州には南米からの移民が多く住んでいることから、南米方面への国際線が充実していることが特徴となっています。

日本からのフライト

現在、日本からマイアミ国際空港への直行便は運航されていません。そのため、日本から直行便が運航されているアトランタ、ダラス、ヒューストン、ロサンゼルス、シカゴ、ニューヨークなどの主要都市で乗り継ぎが必要となり、乗り継ぎ時間も含めた所要時間はおおよそ16〜17時間程度となっています。以下は、2023年冬ダイヤ(10月29日〜2024年3月30日)における東京からマイアミまでのフライトの一例です。

日本発マイアミ行き

航空会社便名東京/羽田発
(HND)
経由地マイアミ着
(MIA)
所要時間*運行日
デルタ航空
(Delta Airlines)
DL296/DL1328**16:25アトランタ
(ATL)
18:4914時間15分毎日
全日空
(ANA)
NH114/UA2217**10:25 ヒューストン
(IAH)
13:3614時間21分毎日
日本航空
(Japan Airlines)
JL12/AA469**10:55 ダラス
(DFW)
13:5914時間29分毎日
*乗り継ぎ時間は含みません。
**アメリカ国内線は出発日によって時刻、便名・機材が異なる場合があります。

マイアミ発日本行き

航空会社便名マイアミ発
(MIA)
経由地東京/羽田
(HND)
所要時間*運行日
デルタ航空
(Delta Airlines)
DL1404**/DL29506:00アトランタ
(ATL)
14:10+117時間00分毎日
全日空
(ANA)
UA2311**/NH11306:35 ヒューストン
(IAH)
15:20+117時間01分毎日
日本航空
(Japan Airlines)
AA2575**/JL1107:00ダラス
(DFW)
15:25+116時間00分毎日
*乗り継ぎ時間は含みません。
**アメリカ国内線は出発日によって時刻、便名・機材が異なる場合があります。
マイアミ国際空港へ乗り入れている鉄道路線

2023年9月現在、マイアミ国際空港には、今回筆者が乗車したマイアミ・デイド交通(Miami-Dade Transit)の「メトロレール・オレンジライン(Metrorail/Orange Line)」の他にも、南フロリダ地域交通局(South Florida Regional Transportation Authority)が運行する通勤鉄道「トライレール(Tri-Rail)」が乗り入れています。なお、2023年中に、トライレールと線路を共有しているアムトラックの長距離列車がマイアミ国際空港駅に乗り入れる計画がありますが、現在のところ実現には至っていません。

マイアミ国際空港へ乗り入れている鉄道事業者路線主な行先
マイアミ・デイド交通
(Miami-Dade Transit)
オレンジライン
(Orange Line)
ダウンタウン
(Downtown)
サウスマイアミ
(South Miami)
南フロリダ地域交通局
(South Florida Regional Transportation Authority)
トライレール
(Tri-Rail)
フォートローダーデール
(Fort Lauderdale)
ボカラトン
(Boca Raton)
ウェストパームビーチ
(West Palm Beach)
2023年9月時点の情報
メトロレール(Metrorail)・メトロムーバー(Metromover)

メトロレールは1984年に営業運転を開始した路線で、ダウンタウンとマイアミ市内南部、および市内北西部を結ぶ全長約40kmの高架の専用軌道を走る都市高速鉄道路線です。当初からマイアミ国際空港までの乗り入れが計画されていましたが、マイアミ国際空港駅への乗り入れは2012年に実現したため、空港駅は比較的新しい駅となっています。

メトロレール路線図
Image: Miami-Date Transit

なお、メトロレールのガバメントセンター(Gevernment Center)駅またはブリッケル(Brickell)駅でメトロムーバーと呼ばれる無料の新交通システムに乗り換えることで、ダウンタウンやブリッケルエリアを効率的に回ることができるようになっています。

メトロレールのガバメンタセンター駅およびブリッケル駅で乗換えが可能なメトロムーバーの路線図
Image: Miami-Date Transit
速達性 ★★★★☆

メトロレールは高架の専用軌道を走る都市高速鉄道路線のため定時運行に優れており、最高速度90km/h程度と比較的高速で走行することが可能です。そのため、ダウンタウンが目的地の場合や目的地が駅の近くの場合は、所要時間は車とほぼ変わらず比較的速達性のある移動手段と言えます。特にマイアミ都市圏内は交通渋滞が頻繁に発生するので、定時運行が可能な鉄道利用による速達メリットが期待できます。

目的地の一例最寄駅所要時間*
(メトロレール)
所要時間
(自動車)
ベイサイドマーケットプレイス
(Bayside Market Place)
カレッジベイサイド駅**
(College Bayside Station)
26分
(最寄駅まで21分)
12〜22分
ブリッケルシティセンター
(Brickell City Centre)
エイスストリート駅**
(Eighth Street Station)
23分
(最寄駅まで22分)
12〜26分
ビスカヤミュージアム&ガーデンズ
(Vizcaya Museum & Gardens)
ビスカヤ駅
(Vizcaya Station)
34分
(最寄駅まで20分)
12〜20分
*各最寄り駅から目的地まで徒歩で向かう場合の所要時間
**ガバメントセンター(Government Center)駅でメトロムーバー(Metromover)へ乗り換え
経済性 ★★★★★

マイアミ空港からのダウンタウンまでの片道運賃は、UberやLyftなどを利用する場合は16〜19ドル(約2,400〜2,800円)くらいかかるのに対し、メトロレールを利用する場合は2.25ドル(約340円)となります。さらに、ダウンタウン内を周回するメトロムーバーは無料で利用できるため、交通費をなるべく抑えたい方にはおすすめです。

目的地の一例最寄駅片道運賃
(オレンジライン)
料金
(Uber/Lyft)
ベイサイドマーケットプレイス
(Bayside Market Place)
カレッジベイサイド駅
(College Bayside)
2.25ドル16〜18ドル
ブリッケルシティセンター
(Brickell City Centre)
エイスストリート駅
(Eighth Street)
2.25ドル16〜19ドル
ビスカヤミュージアム&ガーデンズ
(Vizcaya Museum & Gardens)
ビスカヤ駅
(Vizcaya)
2.25ドル17〜19ドル
利便性 平日★★★★☆/土休日★☆☆☆☆

メトロレールオレンジラインは平日は10〜15分間隔(夜間20:00以降は30分間隔)で空港からダウンタウン方面への直通列車が運転されているため、利便性が高い空港アクセス手段といえます。一方で、土休日は空港からダウンタウン方面への直通列車の運行がなく、ダウンタウン方面への接続列車の運行が30分間隔となっているため注意が必要です。

メトロレールのマイアミ国際空港駅改札口

また、運賃の支払いは券売機でのチケット購入、Easy Cardと呼ばれるICカード、モバイルアプリ(事前にアプリのダウンロードが必要)に対応しているほか、クレジットカードでのタッチ決済にも対応しているため、タッチ決済対応のクレジットカードがある場合は、カードを直接自動改札機のリーダーにタッチするだけで乗車することが可能です。

利便性対応状況詳細
高頻度運転平日:○
土休日:×
平日:10〜15分間隔(夜間20:00以降は30分間隔)
土休日:30分間隔*
ICカードEasy Card
モバイルチケットGo Miami-Dade Transitアプリ
(Apple・Android端末に対応)
クレジットカードタッチ決済タッチ決済に対応したクレジットカードや端末
(VISA、マスターカード、AMEX、Apple Pay、Google Payなど)
*土休日にダウンタウン方面へ向かう場合は、アーリントンハイツ(Earlington Heights)駅間から30分間隔で運行されているグリーンライン南方面行き(Southbound)電車への乗換えが必要
快適性 ★★★☆☆
メトロレールの車両

メトロレールの全路線では、2017年から営業運転が開始された日立レール製の新しい車両が使用されています。また、車両とホームの段差は最小限に抑えられているため、大型荷物などを持っていてもスムーズに乗車することができるほか、車内には大型荷物や自転車用のスペースがあり、車内WiFIも利用可能となっています。なお、一般の都市鉄道のため座席指定などのサービスはありません。

車両の快適設備対応状況詳細
駅のバリアフリー全駅にエレベーターを設置済み
車両のバリアフリー大型荷物スペースおよび車椅子用スペースあり
座席指定サービス×
充電用USBポート×
車内WiFi
トイレ×
情報提供ディスプレイLCDディスプレイ+LED式
日本語案内×
安全性 日中★★★★☆/夜間早朝★☆☆☆☆

メトロレールの利用者の多くは、アメリカの他の都市鉄道同様に低所得者層の人たちが中心となっており、沿線には犯罪発生件数が高いエリアも多く存在します。そのため、土地勘がなく最寄駅から目的地までの距離が遠い場合、空港からダウンタウンへの直通列車の運行がない土休日、利用者が少なくなる早朝や夜間における利用はおすすめしません。一方で、日中の明るい時間帯にガバメントセンター駅またはブリッケル駅でメトロムーバーへ乗り換える分にはそれほど心配はいりません。

安全設備対応状況詳細
車内監視カメラ全車両に設置済み
車内乗務員運転手のみ
駅常駐スタッフ×時間帯によりセキュリティスタッフが巡回
トライレール(Tri-Rail

※今回トライレールには乗車していないため、インターネットで得られる情報を元にまとめています。

トライレールは、1989年から運行が開始されたマイアミとフォートローダーデール、ボカラトン、ウェストパームビーチなどマイアミ都市圏の北部エリアを結ぶ通勤鉄道路線です。マイアミ国際空港への乗り入れは2015年から開始されました。

トライレール路線図
Image: Tri-Rail
速達性 ★★

トライレールは通勤鉄道路線のためメトロレールよりも駅間距離が長く、日本の鉄道でいう快速列車のような位置付けとなります。そのため、中距離以上の移動において速達性を発揮します。例えば、マイアミ都市圏北部エリアのフォートローダーデールビーチやパームビーチが目的地の場合、車と同じくらいの所要時間で目的地まで行くことが可能です(最寄駅からUberやLyftなどのライドシェアを利用すると想定した場合)。

目的地の一例最寄駅所要時間*
(トライレール)
所要時間
(自動車)
ハリウッドビーチ
(Hollywood Beach)
ハリウッド駅
(Hollywood Station)
40〜55分
(最寄駅まで30分)
40〜85分
フォートローダーデールビーチ
(Fort Lauderdale Beach)
フォートローダーデール駅
(Fort Lauderdale Station)
60〜80分
(最寄駅まで47分)
50〜100分
パームビーチ
(Palm Beach)
ウェストパームビーチ駅
(West Palm Beach Station)
115〜120分
(最寄駅まで105分)
85〜140分
*各最寄駅からUberやLyftなどのライドシェアなどを利用した場合の合計所要時間(待ち時間は含まず)
経済性 ★★★★

トライレールの運賃はゾーン制となっており、片道運賃は2.50ドル〜8.75ドルの範囲となっています。なお、最寄駅からビーチなどの最終目的地へ向かう場合は、最寄駅から別にUberやLyftといったライドシェアなどを利用する必要がありますが、空港からライドシェアを利用した場合と比較してかなり経済的に移動できます。

目的地の一例最寄駅片道運賃
(トライレール)
料金
(Uber/Lyft)
ハリウッドビーチ
(Hollywood Beach)
ハリウッド駅
(Hollywood Station)
3.75ドル
(12〜13ドル**)
36〜42ドル
フォートローダーデールビーチ
(Fort Lauderdale Beach)
フォートローダーデール駅
(Fort Lauderdale Station)
5.00ドル
(15〜17ドル**)
49〜58ドル
パームビーチ
(Palm Beach)
ウェストパームビーチ駅
(West Palm Beach Station)
8.75ドル
(8〜9ドル**)
88〜110ドル
*最寄駅から各ビーチまでのライドシェア料金
利便性 ★★☆☆

マイアミ国際空港からの運行間隔は平日のラッシュ時を除いて終日60分間隔となっており、空港へ向かう場合は特に出発時間に余裕を持って利用する必要があるります。そのため、利便性においては車と比較してかなり劣ってしまいます。なお、運賃の支払いは、券売機でのチケット購入、Easy Card、モバイルアプリ(事前にアプリのダウンロードが必要)を利用することが可能です。一方で、メトロレールのようにクレジットカードでのタッチ決済には対応していないので注意が必要です

利便性対応状況詳細
高頻度運転×20〜40分間隔(平日ラッシュ時)
60分間隔(平日ラッシュ時以外・土休日)
ICカードEasy Card
モバイルチケットTri-Railアプリ
(Apple・Android端末に対応)
クレジットカードタッチ決済×
快適性 ★★★★☆
トライレールの車両
Image: Snowman5471 (CC BY-SA 4.0) Wikimedia Commons.

トライレールでは通勤鉄道向けの2階建車両が使用されており、座席は二人掛けのクロスシートおよびボックスシートが基本となっているほか、車内には自転車用スペースや大型荷物用スペースが設置されています。また、車内WiFIも利用可能となっているほか、一部の座席では充電用コンセントも利用できます。しかし、トラレールの駅は低床ホームとなっているため車両の乗降扉にはステップがあります。また、2階建車両のため2階席を利用する際にも車内の階段をのぼる必要があるため、大型荷物を持ち運ぶ場合にはその点を留意する必要があります。

車両の快適設備対応状況詳細
駅のバリアフリー全駅にエレベーターを設置済み
車両のバリアフリー大型荷物用スペースおよび車椅子用スペースあり
(ホームとの段差があるため車椅子で利用の際はアシスタントが必要)
座席指定×
充電用USBポート一部座席に充電用コンセントあり
車内WiFi
トイレ
情報提供ディスプレイ
外国語案内×
安全性 日中★★★★☆/夜間早朝★☆☆

アメリカの他の通勤鉄道路線同様に、トライレールの各列車には車内検札やドア開閉を実施する車掌が乗車しています。そのため、車内では夜間であっても比較的安心して過ごすことができます。ただし、夜間などの暗い時間に利用する場合は、駅から目的地まで安全に行くための交通機関を事前に調べておくことが重要となります。

安全設備対応状況詳細
車内監視カメラ全車両に設置済み
車内乗務員車内検札やドア開閉を実施するため全列車に車掌が乗車
駅常駐スタッフ×時間帯によりセキュリティスタッフが巡回
まとめ

今回はフロリダ州マイアミ都市圏の空の玄関口であるマイアミ国際空港の鉄道アクセスについて紹介しましたがいかがでしたでしょうか?ニューヨークなどの一部の都市を除いて、アメリカの都市鉄道の利用者は低所得者層の人が中心のため、女性一人の場合や早朝・夜間の利用は基本的におすすめしません。一方で、ダウンタウン周辺のホテルに滞在してマイアミ観光する場合や、マイアミ都市圏の北部エリアにあるリゾートビーチを訪れる際など、マイアミ空港の鉄道アクセスは使い方次第では安くて便利な移動手段かと思います。皆さんもマイアミを訪れる機会があれば、メトロレールやトライレールを上手に活用してみてはいかがでしょうか。

※1米ドル=149円で計算。

«
»

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です