テキサス州最高裁判所がテキサス新幹線計画の土地収容権を認める!今後の動向は?

テキサス州最高裁判所は24日、東海道新幹線の技術を使用してダラス(Dallas)とヒューストン(Houston)を結ぶ高速鉄道計画を進める「テキサスセントラル(Texas Central Partners, LLC)」に対して、建設ルートにあたる私有地を取得するために必要となる土地収容権(Eminent Domain)を認める判決を下しました。テキサス高速鉄道計画をめぐっては、プロジェクトに反対する土地所有者らが、テキサスセントラルはテキサス州の規定による鉄道事業者には該当しないと主張し、公共インフラ事業者に与えられる土地収容権は認められないという訴訟を起こしていました。

仮に同州の最高裁判所が原告側の主張を認める判決を下した場合、事実上テキサスセントラルの計画が中止に追い込まれるとの見方が強まっていたため、今回の原告側の主張を退ける判決により、想定された最悪の事態は一旦回避されることになりそうです。

Source: Supreme Court of the State of TexasThe Texan

テキサスセントラルと土地所有者との訴訟問題

今年初めごろ、シカゴに拠点を置く専門雑誌「Railway Age」は、テキサスセントラルの訴訟問題とアメリカ政治の闇に関して5回にわたる特集記事を記載しています。それによると、高速鉄道計画に反対する土地所有者らは、テキサスセントラルは鉄道の運行実績がなくテキサスの規定に基づく鉄道事業者に該当しないと主張し、公共利用の為の土地収容権(Eminent Domain)が認められないとする訴訟をテキサス州で起こし、第一審ではその主張が認められました。しかし、その後の控訴審では一審判決が覆され、裁判所はテキサスセントラルは鉄道事業者に該当すると認め、その後の上告でも審査が拒否されたため、このまま着工に向けた準備が順調に進むとの見方が各メディアの間でも広がっていました。

ダラス駅の完成イメージ
Image: Texas Central

ところが、一度は本件の審査を拒否したはずのテキサス州最高裁判所は昨年夏に方針を一転し、今年1月には原告の訴えに対する審理が行われました。なお、同州最高裁判所は説明義務がないことを理由に、方針転換の理由について明らかにしていません。さらに、1月に実施された審理のタイミングを見計らったかのように、テキサス州の共和党下院議員二人によって高速鉄道プロジェクトのための土地取得に関する法案(High-Speed Rail Land Acquisition Assurance Act: H.R. 6365)が提出され、テキサスセントラルに限らず、高速鉄道を計画する全ての事業者に対して着工前に全区間の土地取得を完了することを義務付けようとする動きまでも見られるようになりました。

ヒューストン駅の完成イメージ
Image: Texas Central

この議員らは今年5月に、最高裁判所宛に原告を支持する意見書(Amicus Curiae Letter)を提出しており、その中で、テキサスセントラルは日本の新幹線技術を使用するため、アメリカ連邦鉄道局(Federal Railroad Administration: FRA)が定める衝突を前提とした鉄道安全基準を満たせないといった、すでに解決済みの問題までまるで未解決かのように説明しており、何としてでも高速鉄道計画を中止に追い込もうとする意図を読みとることができました。ちなみにFRAは、テキサス高速鉄道の安全基準については、テキサスセントラル鉄道のみに適用される独自の安全基準(49 CFR 299)を適用することをすでに決定しています。

CEOの辞職を受けてプロジェクト中止とのうわさが広まる

今月10日、テキサスセントラルのCEOであるカルロス・アギラル(Carlos Aguilar)氏は、自身のLinkedInページにおいてCEOを辞職することを表明していました。また、スペインのビジネスニュース(La Información)がテキサスセントラルの多くの管理責任者がすでに辞職したとも報じ、さらにはカルロス・アギラル氏のポジションを一時的に引き継いだFTIコンサルティングのMichael Bui氏は、破産プロセスなどについてのコンサルティング経験もあることから、テキサスの高速鉄道計画が中止に向けて動いているのではとの記事が多く見られるようになっていました。

ダラス〜ヒューストン間に唯一設置される予定の中間駅となるブラゾス・バレー駅
Image: Texas Central

一方で、アギラル氏は自身の書いたステートメントにおいて、テキサスの持続的な発展のためにも、米国の主要都市圏であるダラスとヒューストンの間を世界最高の鉄道システムで結ぶことの重要性は今後も変わらないとのメッセージを発信しており、テキサスセントラルもNBCニュースの記事で、引き続きプロジェクトの早期着工を目指していくと述べていました。

Source: NBCDFWHouston PressRailway GazetteThe Texans

実際に着工されるまでは先行き不透明な状況が続く見込み

今回、仮にテキサス州最高裁判所が原告の主張を認めてしまった場合、日本の新幹線技術をアメリカに輸出する道がほぼ閉ざされてしまいかねない状況だったため、原告側の主張を破棄しテキサスセントラルの主張が認められたことは朗報と言えます。ましてや、判事全員が共和党員である中での判決としては、非常に大きな意味があるかと思われます。

テキサスの典型的な風景の中を走る新幹線のイメージ
Image: Texas Central

しかしながら、前述の法案成立のリスクがまだ残ることや、今年に入ってからは、テキサスセントラルがすでに取得している土地の固定資産税の未払いなどが指摘されており、さらに最新の見積もりでは300億ドル(約4兆円)ともされる建設費用の調達方法も不透明となっています。また、環境アセスメントなどの手続きは完了しているものの、着工に必要な許可申請がまだ始まっていないとみられることから、アメリカで日本の新幹線が走る姿を見ることができるかについては、この先もしばらく不透明な状況が続きそうです。

Source: NBCDFW

※1米ドル=135円で計算

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