アムトラック、2021年に最も遅延が多かった列車は?

アムトラック(Amtrak)は、乗客が目的地に定刻の15分以内に到着できた各列車ごとの割合(2021年版)を公表しました(Amtrak Host Railroad Report Card 2021)。それによると、遅延の影響を受けた乗客が最も多かったのは、ワシントンD.C.〜シカゴ間の「キャピトルリミテッド」とニューオーリンズ〜ロサンゼルス間の「サンセットリミテッド」で、定刻15分以内に目的地に到着できた乗客の割合は3割に満たなかったとのことです。一方、最も遅延の影響を受けなかった列車は、シカゴ〜ミルウォーキー間を運行する「ハイアワサ」で、95%の乗客が定刻の15分以内に目的地に到着できたとのことです。

遅延が最も多かった列車の一つでワシントンD.C.とシカゴを結ぶ「キャピトル・リミテッド」
Image: Amtrak
アムトラックの遅延の主な原因

アムトラックの都市間および大陸横断列車は、北東回廊の一部区間を除いて、貨物鉄道(Freight Railroads)が保有する線路上を走行しています。そのため、アムトラックは貨物鉄道に線路使用料を払って列車を運行しています。本来であれば、旅客を輸送するアムトラックの列車は貨物列車よりも優先して走行されるべきなのですが、アメリカの貨物鉄道は収益性が非常に高いため、貨物列車の運行を優先させて旅客列車を退避させるといった事態が頻繁に発生しているのが現状です。そのため、アムトラックの遅延の原因の7割近くは貨物列車によるものとなっています。

アメリカ連邦政府はこのような事態に対処するため、各列車の年間利用者のうち8割以上が定刻の15分以内に目的地へ到着できるよう旅客列車の運行を優先させることを貨物鉄道に義務付けており、従わない事業者へは罰則を課すことも可能となっています。しかし、この罰則規定が適用された事例は過去に1度しかなく、ほぼ放置状態となっているのが現状となっています。

以下は、アムトラックが線路を使用する貨物鉄道が旅客列車の運行を優先させているかを格付けで示したものです。

順位貨物鉄道2021年格付け
1カナディアン・パシフィック
Canadian Pacific
A
2カナディアン・ナショナル
Canadian National
A
3BNSF鉄道
BNSF
B+
4CSXトランスポーテーション
CSX
B
5ユニオン・パシフィック
Union Pacific
C+
6ノーフォーク・サザン
Norfolk Southern
D-
全列車の定時運行率ランキング(北東回廊のみ運行する列車は除く)
2021年の定時運行率第一位に輝いたシカゴとミルウォーキーを結ぶハイアワサ号
Image: David Wilson (CC BY-SA 2.0). Wikimedia Commons

以下は、アムトラック列車の2021年定時運行率(乗客が目的地に定刻の15分以内に到着できた割合)のランキングです。それによると、全体のおよそ7割に当たる列車が連邦政府の定める8割以上の定時運行率を達成できておらず、大陸横断列車に限って見れば、シカゴとニューオーリンズを結ぶ「シティオブニューオーリンズ」を除いてすべて8割以下の水準となっています。

順位列車名運行区間定時運行率*
1ハイアワサ
Hiawatha
Milwaukee – Chicago95%
2キーストーン
Keystone
New York – Harrisburg93%
3イーサンアレンエクスプレス
Ethan Allen Express
Rutland – New York91%
4エンパイアサービス
Empire Service
New York – Albany91%
5カールサンドバーグ・イリノイゼファー
Carl Sandburg/Illinois Zephyr
Chicago – Quincy89%
6バレーフライヤー
Valley Flyer
New Haven – Greenfield89%
7キャピトルコリダー
Capitol Corridor
Auburn – San Jose88%
8バーモンター
Vermonter
St. Albans – Washington, DC85%
9メープルリーフ
Maple Leaf
Niagara Falls – New York84%
10パシフィックサーフライナー
Pacific Surfliner
San Luis Obispo – San Diego84%
11シティオブニューオーリンズ
City of New Orleans
Chicago – Orleans83%
12バージニアサービス
Virginia Service
Washington D.C. – Roanoke81%
13サンホアキンズ
San Joaquins
San Francisco Bay Area/Sacramento – Bakersfield80%
14リンカーンサービス
Lincoln Service
Chicago – St. Louis79%
15ダウンイースター
Downeaster
Brunswick – Boston78%
16エンパイアサービス
Empire Service
New York – Niagara Falls78%
17バージニアサービス
Virginia Service
Washington D.C. – Richmond/New Port News/Norfolk77%
18ピードモント
Piedmont
Raleigh – Charlotte76%
19ペレマルケット
Pere Marquette
Chicago – Grand Rapids74%
20イリニ・サルーキ
Illini/Saluki
Chicago – Carbondale72%
21ミズーリリバーランナー
Missouri River Runner
St. Louis – Kansas City71%
22ハートランドフライヤー
Heartland Flyer
Oklahoma City – Fort Worth69%
23ペンシルバニアン
Pennsylvanian
New York – Pittsburgh68%
24カロリニアン
Carolinian
New York – Charlotte67%
25ブルーウォーター
Blue Water
Chicago – Port Huron66%
26パルメット
Palmetto
New York – Savannah62%
27ウォルバリン
Wolverine
Chicago – Pontiac59%
28カスケーズ
Cascades
Seattle – Eugene57%
29クレセント
Crescent
New York – New Orleans57%
30テキサスイーグル
Texas Eagle
Chicago – San Antonio57%
31レイクショアリミテッド
Lake Shore Limited
New York/Boston – Chicago56%
32カーディナル
Cardinal
Chicago – New York55%
33コーストスターライト
Coast Starlight
Seattle – Los Angeles54%
34エンパイアビルダー
Empire Builder
Chicago – Seattle/Portland54%
35シルバーメティオ
Silver Meteor
New York – Miami49%
36オートトレイン
Auto Train
Lorton – Sanford44%
37シルバースター
Silver Star
New York – Miami42%
38カリフォルニアゼファー
California Zephyr
Chicago – Emeryville37%
39サウスウェストチーフ
Southwest Chief
Chicago – Los Angeles37%
40キャピトルリミテッド
Capitol Limited
Washington D.C. – Chicago28%
41サンセットリミテッド
Sunset Limited
New Orleans – Los Angeles28%
*目的地へ定刻の15分以内に到着できた乗客の割合
**アディロンダックは2021年の運行がなかったため除外

Source: Amtrak

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