アムトラック、新型「アセラ」の運行開始時期がさらに遅れる可能性を示唆

アムトラック(Amtrak)の内部監査部門は、9月29日に公表した新型アセラ開発プログラムに関する監査報告書(OIG-A-2023-013)において、北東回廊で運行している高速列車「アセラ(Acela)」に来年から投入を予定している新型車両の営業開始時期が、更に遅れる可能性があることを示唆しました。新型アセラはフランスの車両メーカー「アルストム(Alstom)」が開発した「アヴェリア・リバティ(Avelia Liberty)」と呼ばれる車両で、アムトラックは当初、2021年に最初の編成を受領し、同年から営業運転を開始する予定とされていました。しかし、米国連邦鉄道局(Federal Railroad Administration: FRA)が要求しているコンピューターモデルによる安全性検証が完了していないことに加え、パンデミックによる人手不足や量産された車両に欠陥が見つかったことで、営業開始時期が複数回にわたって延期となり、すでに当初計画よりも3年以上の遅れが見込まれています。

内部監査部門が指摘している2つの遅延理由
1.走行試験の開始に必要なコンピュータモデルによる安全性検証が未だ完了せず
ニューヨーク州ホーネルにあるアルストムの工場で製造中の新型アセラ
Image: Amtrak

報告書によると、FRAは、新型車両の営業運転開始のために必要となる走行試験を実施するにあたって、アムトラック側にコンピューターモデルを使用した安全性の検証結果の提出を求めています。しかし、コンピューターモデルを構築する責任がある車両メーカーは、その検証を完了していない段階で量産編成の製造を開始し、これまでに量産編成として製造される予定の28編成のうち、およそ半分にあたる12編成の車両を製造したとのこです。また、発注者であるアムトラックが車両メーカーを過度に信頼しきっていたため、この問題に対する適切なタイミングでの対処が遅れてしまったとしています。なお、現在もこのコンピューターモデルを構築するには至っていません。

2. すでに製造された車両の欠陥も見つかる
内装の仕上げなどにいくつかの欠陥が見つかっているカフェカー
Image: Amtrak

2023年7月時点において、前述のとおり量産編成12編成、カフェカー22両の製造が完了していますが、これらの全ての車両について、構造上の欠陥を含む何らかの欠陥が見つかっており、設計変更などを強いられている状況があることが報告されています。報告書では、新設計の車両を製造する際には、初期段階においてある程度の欠陥が見つかることは通常の範囲内であるとしつつも、車両メーカー側がこれらの問題を解決するために示された工程を未だに完了できていないことに加え、アムトラック側もより詳細なスケジュールを車両メーカー側から得ていないため、今後、この問題がどの程度営業運転開始時期に影響するのか、正確な予測ができない状況にあるとしています。

今後はどうなる?

アムトラックでは、現在のところ新型アセラの運行開始時期を2024年としていますが、今後の状況によってはさらなる遅れの可能性も排除できないとしています。なお、新型アセラの運行開始時期が当初予定よりも3年以上遅れることになると、すでに廃車予定だった車両の維持にかかる更なる追加費用負担が避けられなくなる上、既存車両の信頼性低下による遅延や減便が発生し、「アセラ」ブランドへのマイナスイメージ拡大による利用客離れが懸念されることになります。アムトラックとしては、パンデミックによって激減したビジネス需要がようやく回復しつつある絶好のチャンスを逃すことになりかねないため、何としても解決策を見つけ出してほしいところです。

Image: Amtrak

アムトラックの内部監査部門は、今後予定されている長距離列車を含むアセラ以外の車両の大量更新においても、今回と同様の問題を繰り返さないようにするため、アムトラックに対し、車両メーカーとの連携強化を徹底し、欠陥などが見つかった場合の改修に要する期間やリスクなどを正確かつ迅速に把握できるよう改善を求めていくとしています。

Source: Amtrak Office of Inspector General

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