全米一の人口を抱えるカリフォルニア州では、サンフランシスコ、ロサンゼルス、サンディエゴ、サクラメントなど、州内の主要都市を最高時速320km以上の高速鉄道で結ぶ「カリフォルニア高速鉄道(California High-Speed Rail: CAHSR)」プロジェクトが進行中です。同プロジェクトはカリフォルニア州高速鉄道局(California High-Speed Rail Authority)が中心となって進められているもので、2008年には、最重要区間であるサンフランシスコ〜ロサンゼルス/アナハイム間の建設費の一部に州の税金を投じることを問う住民投票「Proposition 1A」が承認されました。
以降、幾度となく着工延期、計画変更、規模縮小などが繰り返されてきたCAHSRプロジェクトですが、現在、一部区間では着々と建設工事が進められています。今回は、そんなCAHSRプロジェクトについて調べてみたいと思います。第8回は、2033年の開業を目指しているベーカーズフィールド(Bakersfield)〜ロサンゼルス・アナハイム(Los Angeles/Anaheim)間のうち、バーバンク(Burbank)からロサンゼルスまでの進捗状況ついてさらに詳細を見ていきます。
バーバンク〜ロサンゼルス間の概要
バーバンク〜ロサンゼルス間は、ロサンゼルス・アナハイムまでの区間ととも2033年に開業予定の区間となります。バーバンクはハリウッド・バーバンク空港の新ターミナルのそばに建設され、ロサンゼルスではLAメトロ、アムトラック(Amtrak)、メトロリンク(Metrolink)と接続します。
建設ルートおよび整備方式
ほぼ全区間でメトロリンクと並行するルートを採用
バーバンクからロサンゼルスまでの区間(路線延長約23km)はすでに環境アセスメントが終了しており、今年3月に整備方式およびルートが決定しています(Record of Decision: ROD)。この区間は、主に都市部を走行する区間となるため、LAメトロが保有する線路を利用して運行しているメトロリンクのベンチュラカウンティ線(Ventura County Line)とアンテロープバレー線(Antelope Valley Line)の敷地を活用して整備されます。
電化複線+非電化複線の複々線区間として整備
バーバンクからロサンゼルスまでのうち、地下に建設されるハリウッド・バーバンク空港駅から、地上を走るメトロリンクのアンテロープバレー線(Antelope Valley Line)に合流する部分までは地下線として建設されますが、それ以外は地上区間として整備されます。
既存の路線との合流地点から先は、高速旅客列車用の電化複線とメトロリンクおよび貨物列車が使用する非電化複線が整備されるため複々線区間となります。なお、電化複線は主にCAHSRが使用しますが、その他の旅客鉄道事業者も利用可能で、おそらくアムトラックやラスベガスからのブライトラインウェストなどが想定されているものと思われます。
道路との立体交差地点の多くは既存のもをそのまま活用しますが、現在ある踏切を全て撤去するために、7地点では道路のアンダーパスまたはオーバーパスが新設されます。
上のイメージは既存のグレンデール・ブルバード(Glendale Blvd)の立体交差構造物に防音壁などを設置して高速鉄道対応に改良したイメージです。
グレンデール市付近では、ロサンゼルスとの境界線を走行します。この区間も全て複々線として整備され、電化複線だけでなく非電化複線も新しい軌道として整備されます。
メトロリンクはバーバンク駅とユニオンステーションの間にあるグレンデール(Glendale)駅に停車しますが、CAHSRは停車しないため電化複線側にはホームが設置されません。また、グレンデール駅は歴史的建造物として保存価値があるため、高速鉄道の工事による影響を受けないようにルートが設定されています。
ロサンゼルス市内に入るとロサンゼルス川(Los Angeles River)沿いを走行し、南カリフォルニア最大の交通ターミナルであるユニオンステーションへと向かいます。
ロサンゼルス川付近を走行する高速鉄道のイメージです。現在はメトロリンクの軌道が敷かれています。
駅の整備方法
ロサンゼルス・ユニオンステーション
CAHSRのロサンゼルス・ユニオンステーション(Los Angeles Union Station)の建設予定地は、現在のユニオンステーションと同じ場所で同駅を改良する形で整備されます。
ユニオンステーションでは、LAメトロ、アムトラック、メトロリンクなどと接続が可能となり、当駅で一回の乗り換えでハリウッド、パサデナ方面、さらには今年開業予定のリージョナルコネクターを利用してサンタモニカやロングビーチなどへ行くことができるようになります。
高速鉄道用のホームは島式ホーム2面4線分が割り当てられる予定となっています。
ユニオンステーションの改良工事は同駅の施設を保有するLAメトロが中心となって実施(Link USプロジェクト)されており、2028年にロサンゼルスで開催される夏季オリンピックまでに完了させる予定です。
Link USプロジェクトでは、ホーム全体を覆うシボリックな大屋根を設置する計画で、現在のユニオンステーションのイメージが大きく変わることになります。
進捗状況
カリフォルニア高速鉄道の最重要区間の一つであるバーバンク〜ロサンゼルス間の環境アセスメントは、今年3月に終了しました。また、南カリフォルニアの拠点駅となるロサンゼルス・ユニオンステーションについては、4月に建設費の負担に関する合意がLAメトロとの間でなされており、同区間の整備に向けて着々と準備が進められている状況です。
Source: CHSRA
※1ドル=130円で計算
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