ゆっくりと着実なペースで進むアメリカの高速鉄道計画の概要

アメリカの高速鉄道整備計画と言えば、2000年代後半から聞かれるようになったカリフォルニア高速鉄道やテキサスセントラル鉄道といった計画を想像される方も多いかと思いますが、アメリカで高速鉄道整備構想の検討が始まったのは、日本で東海道新幹線が開通した1964年頃までさかのぼることをご存知でしょうか。現在、アメリカで唯一最高速度200km/h以上の高速運転を行なっている鉄道路線はボストンとワシントンD.C.を結ぶ北東回廊(Northeast Corridor)のみとなっていますが、実はこの北東回廊では1969年から運行開始した「メトロライナー(Metroliner)」によって最高速度190km/hでの営業運転を実現しています。

2代目メトロライナーとして2000年から運行が開始された現在アメリカ唯一の高速列車アセラ

しかしながら、最初の構想から60年近く経った現在においてもアメリカにおける高速鉄道網の整備は思うように進んでいないのが現状となっています。今回は、そんなアメリカにおいて計画されている高速鉄道整備構想についてその背景および現況について見ていきます。

Source: High-Speed Rail Strategic PlanFRA High-Speed Rail Timeline

鉄道大国から車社会へ

アメリカは今でこそ車社会として知られていますが、1900年代前半までは世界屈指の鉄道大国であり、長距離都市間鉄道のみならず、現在の日本の大都市における私鉄ビジネスの元祖でもある「インターアーバン(Interurban)」と呼ばれる短距離の民間都市間電気鉄道が数多く存在するほど鉄道が発達していました。

アメリカの都市間移動のモード別シェアの変遷
Image: High-Speed Rail Strategic Plan

しかし、第二次世界大戦以前から進んでいたモータリゼーションが加速し、飛行機の普及もすすんだことで、採算が取れなくなった多くの旅客鉄道路線が廃線または貨物線への転換へと追い込まれていきました。その後、いよいよ存続が危ぶまれる状態にまで追いやられてしまった全米各地の民営の都市間旅客鉄道を維持するため、1970年に「鉄道旅客サービス法(Rail Passenger Service Act)」制定され、その翌年の1971年に現在アムトラックとして知られる「全米鉄道旅客公社(National Railroad Passenger Corporation: Amtrak)」が誕生することとなります。

最盛期と比較して大幅に路線網を失った現在のアメリカの旅客鉄道ネットワーク
※都市間列車(赤ライン)、通勤鉄道(黄ライン)
Image: FRA

しかし、アムトラック誕生後も格安航空会社の誕生などによって中・長距離旅客が奪われることとなり、現在、アメリカにおいて都市間列車が高頻度で運行されているのは、人口密集地域で鉄道の唯一高速化が進められた北東回廊のみとなっています。その他は全米各地を結ぶ大陸横断列車や1日数本運行のみの都市間列車が貨物列車の合間を縫うように細々と運行されているのみとなっています。

北東回廊から始まった高速鉄道整備構想

衰退の一途をたどるアメリカの都市間列車について、アメリカ連邦政府もただ固唾を呑んで見守っていたわけではありません。アメリカ連邦政府は、東海道新幹線が開業した翌年の1965年になると、人口密集地域であるニューヨークとワシントンD.C.などを結ぶ北東回廊(Northeast Corridor)の高速化を支援するために「1965年高速陸上交通法(High Speed Ground Transportation Act of 1965)」を制定します。そしてその翌年には、アメリカ合衆国運輸省(United States Department of Transportation)傘下の組織の一つとして、1967年に連邦鉄道局(Federal Railroad Administration: FRA)が設立され、以降、同局が中心となり高速鉄道計画への予算の割り当てや整備計画の作成などが行われていくこととなります。

ペン・セントラル鉄道時代のメトロライナー(のちにアムトラックが運行を引き継ぐことになる)
Image: Roger Puta

なお、高速陸上交通法の制定から4年後の1969年には、FRAからの資金提供によって当時のペンシルバニア鉄道、バッド(Budd)社、ゼネラル・エレクトリック、ウェスティングハウスが共同開発した「メトロライナー(Metroliner)」の運行が開始されています。メトロライナーは、現在のアムトラック「アセラ(Acela)」の前身となる列車で、運行開始当時は最高時速約190kmでニューヨーク・ワシントンD.C.間(約362km)をおよそ2時間30分(ノンストップ列車)で結んでいました。

北東回廊以外での展開模索と磁気浮上式鉄道

メトロライナーの登場後しばらくの間は、北東回廊以外で高速鉄道を整備しようとする大きな動きは見られませんでしたが、1984年になると「1980年旅客鉄道再生法(Passenger Railroad Rebuilding Act of 1980)」によって州レベルでの高速鉄道回廊の実現可能性調査に対する予算が確保されたことを受け、カリフォルニア州、フロリダ州、テキサス州、オハイオ州、ネバダ州などでは民間資金を活用したコンソーシアムも設立されました。

Image: National Maglev Initiative Final Report

また1980年代後半には、粘着式高速鉄道よりも高速走行が可能な磁気浮上式鉄道(リニアモーターカー)への関心が高まりはじめ、FRAによって初期段階の実現可能性調査が実施されます。そして、1991年には「国家磁気浮上式鉄道イニシアチブ(National Maglev Initiative: NMI)」を発足させ、NMIは1993年に磁気浮上式鉄道の今後の展開の可能性に関する最終報告書(National Maglev Initiative Final Report)を取りまとめ、これ以降、高速鉄道整備構想における整備方法の一つとして磁気浮上式鉄道も検討対象に含まれることとなります。

高速鉄道回廊の指定

1991年になると「インターモーダル陸上輸送効率化法(Intermodal Surface Transportation Efficiency Act of 1991: ISTEA)」が制定されたことによって、初めて具体的に高速鉄道回廊が指定されることとなります。ISTEAでは、合計5つの路線が高速鉄道回廊として指定されましたが、1998年に連邦政府による交通投資を目的とした「21世紀に向けた交通平等法(Transportation Equity Act for the 21st Century: TEA-21)」が制定され、その中で高速鉄道回廊を最大6つまで追加することが明記されたため、現在までに以下の合計11回廊(北東回廊を含む)が高速鉄道回廊として指定されています。

回廊(コリドー)名指定区間指定年
シカゴ・ハブ・ネットワーク*
Chicago Hub Network
シカゴ〜デトロイト
Chicago – Detroit
1992年
ISTEA
シカゴ〜セントルイス
Chicago – St. Louis
1992年
ISTEA
シカゴ〜ミルウォーキー
Chicago – Milwaukee
1992年
ISTEA
ミルウォーキー〜ミネアポリス〜セントポール
Milwaukee – Minneapolis – St. Paul
1998年
TEA-21
インディアナポリス〜シンシナティ
Indianapolis- Cincinnati
1998年
TEA-21
ルイズビル〜クリーブランド〜コロンバス〜デイトン〜シンシナティ
Louisville – Cleveland – Columbus – Dayton – Cincinnati
2000年
TEA-21
セントルイス〜カンザスシティ
St. Luis – Kansas City
2001年
TEA-21
フロリダ回廊
Florida Corridor
マイアミ〜オーランド〜タンパ
Miami – Orlando -Tampa
1992年
ISTEA
カリフォルニア回廊
California Corridor
サンディエゴ・ロサンゼルス〜ベイエリア/サクラメント
San Diego / Los Angeles – Bay Area / Sacramento
1992年
ISTEA
パームデール〜ラスベガス
Palmdale – Las Vegas
2009年
TEA-21
南東回廊
Southeast Corridor
ワシントンD.C.〜リッチモンド〜シャーロット
Washington, DC. – Richmond – Charlotte
1992年
ISTEA
シャーロット〜グリーンビル〜アトランタ〜メイコン
Charlotte – Greenville – Atlanta – Macon
1998年
TEA-21
メイコン〜ジェサップ
Macon – Jesup
2000年
TEA-21
ローリー〜コロンビア〜サバンナ〜ジャクソンビル
Raleigh – Columbia – Savannah – Jacksonville
1998年
TEA-21
パシフィックノースウェスト(PNW)回廊
Pacific Northwest Corridor
ユージーン〜ポートランド〜シアトル〜バンクーバー
Eugene – Portland – Seattle – Vancouver
1992年
ISTEA
ガルフコースト回廊
Gulf Coast Corridor
ニューオーリンズ〜バーミングハム
New Orleans – Birmingham
1998年
TEA-21
バーミングハム〜アトランタ
Birmingham – Atlanta
2000年
TEA-21
キーストーン回廊
Keystone Corridor
フィラデルフィア〜ハリスバーグ
Philadelphia – Harrisburg
1998年
TEA-21
ハリスバーグ〜ピッツバーグ
Harrisburg – Pittsburg
2000年
TEA-21
エンパイアステート回廊
Empire State Corridor
ニューヨーク〜オールバニ〜バッファロー
New York – Albany – Buffalo
1998年
TEA-21
北ニューイングランド回廊
Northern New England Corridor
ボストン〜ポートランド〜オーバーン
Boston – Portland – Auburn
2000年
TEA-21
ボストン〜モントリオール
Boston – Montreal
2000年
TEA-21
ボストン〜スプリングフィールド〜オールバニ
Boston – Springfield – Albany
2004年
CAA**
スプリングフィールド〜ニューヘイブン
Springfield – New Haven
2004年
CAA**
サウスセントラル回廊
South Central Corridor 
ダラス〜フォートワース〜オースティン〜サンアントニオ
Dallas – Fort Worth – Austin – San Antonio
2000年
TEA-21
フォートワース〜オクラホマシティ〜タルサ
Fort Worth – Oklahoma City – Tulsa
2000年
TEA-21
ダラス〜テキサカーナ〜リトルロック
Dallas – Texarkana – Little rock
2000年
TEA-21
北東回廊***
Northeast Corridor
ワシントンD.C.〜フィラデルフィア〜ニューヨーク〜ボストン
Washington, D.C. – Philadelphia – New York – Boston
2011年
*1992年に指定された当時はミッドウェスト回廊(Midwest Corridor)
**Consolidated Appropriations Act of 2005
***既存路線以外に新設路線を整備することも想定

Source: FRA High-Speed Rail Timeline

新たな高速鉄道ビジョンの策定

1990年代から2000年にかけて具体的な高速鉄道回廊を指定するの動きは活発化したものの、この頃、大幅に増額されていった高速道路整備や航空関連への予算とは対照的に、鉄道への予算はほぼ皆無に等しい状況が続きました。また、予算不足に加えて明確な整備方針などが欠如していたこともあり、2000年にメトロライナーの後継となるアセラの運行が開始された以外は特に目立った進捗は見られませんでした。

交通インフラへの投資額の変遷(紫:自動車、黄色:航空、緑:鉄道)
Image: High-Speed Rail Strategic Plan

しかし、2008年になると「旅客鉄道投資改善法(Passenger Rail Investment and Improvement Act of 2008: PRIIA)」によって高速鉄道回廊整備の実現に向けた基本枠組みが作成され、その翌年の2009年には、当時のオバマ大統領の署名によって制定された「アメリカ復興・再投資法(American Recovery and Reinvestment Act: ARRA)」において、80億ドルの予算を高速鉄道の整備を前提とした都市間鉄道プロジェクトへ優先的に割り当てることが明記されます。それを受けて、FRAは新たな高速鉄道ビジョンを示した高速鉄道戦略計画(High-Speed Rail Strategic Plan)を示し、ここで改めてこれまでに指定された高速鉄道回廊構想が注目されることとなります。

2009年の高速鉄道戦略計画で示された高速鉄道回廊
Image: High-Speed Rail Strategic Plan

なお、高速鉄道の定義は国によって様々ですが、FRAでは高速鉄道戦略計画の中で以下のように分類しています。ただし、アメリカの高速鉄道の定義は統一されれているわけではなく、州や政府機関によって様々な定義が存在しています。

種類*最高速度運行頻度想定都市間距離専用線PTC**
高速鉄道
High-Speed Rail(Express)
240 km/h以上
(150 mph以上)
320〜965km
(200〜600マイル)
準高速鉄道
High-Speed Rail(Regional)
201〜240 km/h
(110〜150 mph)
中〜高160〜800km
(100〜500マイル)
高速化対応在来線
Emerging High-Speed Rail
145〜177 km/h
(90〜110 mph)
160〜800km
(100〜500マイル)
×
在来線
Conventional Rail
127〜140km/h
(79〜90 mph)
1〜12往復160km以上
(100マイル以上)
××
*日本語名は便宜上付けた名称です
**ポジティブトレインコントロール
高速都市間鉄道(HSIPR)プログラムの発足

2010年以降は、これまでほとんど進まなかった高速鉄道プロジェクトへの予算割り当てを戦略的に実施することを目的に、FRAのもとで「高速都市間鉄道プログラム(High Speed Intercity Passenger Rail Program: HSIPR Program)」が発足します。HSIPRプログラムでは以下の図のとおり、都市間鉄道を都市圏のマーケット規模やニーズに合わせて、日本の新幹線のような専用軌道として整備する高速鉄道プロジェクトだけでなく、既存インフラの改良による部分的な高速化や、高速鉄道へ接続するための支線も含めることで都市間列車サービスを3段階に分類して予算割り当てを実施することとなりました。

HSIPRにおける都市間鉄道のサービス区分(各区分の詳細は以下参照)
Image: HSIPR
サービス分類*最高速度サービス内容
最速達タイプ
(Core Express)
200〜400km/h
(125〜250 mph)
人口密度の高い大都市間を結ぶ列車
速達タイプ
(Regional)
145〜200km/h
(90〜125 mph)
中〜大規模の都市間を結ぶ列車
支線タイプ
(Feeder)
145km/hまで
(90 mphまで)
最速達/速達タイプへ接続する列車
かつ将来的に速達タイプ以上への格上げが期待される列車
*日本語名は便宜上付けた名称です

これにより、莫大な整備費用などを理由に整備がほとんど進まなかった高速鉄道整備プロジェクトを段階的に整備していく方向に舵をきることになります。これは、欧州などで多く採用されている高速鉄道整備の考え方と同じです。

高速鉄道回廊の整備状況

HSIPRプログラムの発足以降、非常にゆっくりなペースではありますが、これまで長らく進まなかった都市間列車の改良や大規模プロジェクトが目に見える形で動き出します。中でも最も多くの予算が割り当てられたのは、2008年にカリフォルニア州の高速鉄道建設に関する法律「Proposition 1A」が可決されたことで建設が決まっていたカリフォルニア高速鉄道となります。またその他の北東回廊、シカゴハブネットワーク、PNW回廊のシアトル〜ポートランド間、南東回廊のワシントンD.C.〜シャーロット間へ割り当てられた予算を含めると、全米の人口の65%を占めかつ今後も人口増加が見込まれる5大メガリージョンだけで85%もの予算が割り当てられたことになります。

HSIPRによって予算が割り当てられた高速鉄道関連プロジェクトの一覧(2016年時点)
Image: HSIPR Federal Investment Highlights

以下は、HSIPRプログラムによる予算補助を受けて、着工ないし整備が完了した主要プロジェクトの一覧です。なお、これらのプロジェクトのうち高速鉄道(High-Speed Rail – Express)および最速達タイプ(Core Express)のどちらにも分類されるのはカリフォルニア高速鉄道のみで、その他のプロジェクトは在来線の改良による高速化がメインとなっています。そのため、これらのプロジェクトによる渋滞緩和などの効果は限定的と思われ、既存の都市間移動手段からシェアを大きく奪還できるものではありません。ただ、日本とは都市構造が根本から異なるアメリカにおいては、建設しやすさを優先するのは現実的と言えます。

回廊名着工/整備済の区間整備方式**HSIPRでの分類最高速度向上
カリフォルニア回廊カリフォルニア高速鉄道
(セントラルバレー区間)
高速鉄道Core Express新設路線
321 km/h以上
北東回廊ニューヨーク〜フィラデルフィア準高速鉄道Core Express217 → 257 km/h
PNW*回廊シアトル〜ポートランド在来線Regional
シカゴ・ハブシカゴ〜セントルイス高速化対応在来線Regional127 → 177 km/h
シカゴ・ハブシカゴ〜デトロイト高速化対応在来線Regional127 → 177 km/h
南東回廊ワシントンD.C.〜リッチモンド在来線Regional
南東回廊ローリー〜シャーロット在来線Regional
南東回廊リッチモンド〜ローリー在来線Feeder
*パシフィックノースウェスト
**便宜上付けた名称です
民間資本による開発(建設中または環境アセスメントが終了しているのもの)
ブライトライン

フロリダ州では、マイアミ〜オーランド〜タンパを結ぶ高速鉄道構想が過去に何度か立ち上がり、HSIPRプログラムによって予算配分も行われる予定でしたが、残念ながら全て中止に追い込まれてしまいました。しかしこれらの計画は現在、マイアミ〜ウェストパームビーチ間で運行されている民間旅客鉄道「ブライトライン(Brightline)」として実現されています。ブライトラインは、現在オーランドまでの延伸工事を進めており、2023年には延伸区間の一部で北東回廊以外では初となる最高速度200km/h運転が実現する予定です。なお、ブライトラインは北米で唯一民間によって運行されている都市間鉄道となっています。

ブライトライン・ウェスト

ブライトライン・ウェストはラスベガスとロサンゼルスを最高速度300km/h程度で結ぶ高速鉄道計画です。計画が発表された当初は「デザートエクスプレス(DesertXpress)」と呼ばれていたもので、2018年にブライトラインを保有するフォートレス・インベストメント・グループ(Fortress Investment Group)が当プロジェクトの権利を取得したことで、以降はブライトライン・ウェスト(Brightline West)としてラスベガス〜ビクターバレー間の2023年着工を目指して計画が進められています。また、現在ビクター・バレー〜ランチョ・クカモンガ(Rancho Cucamonga)間の環境アセスメントが実施されており、今年末には結果が公表される予定です。

テキサスセントラル鉄道

テキサスセントラル鉄道(Texas Cental Railway)は日本で俗に言うテキサス新幹線で、ダラスとヒューストンを結ぶ高速鉄道路線として2014年に環境アセスメントが開始されました。テキサスセントラル鉄道では、東海道新幹線をベースとしたシステムが採用されることが決まっており、実現すれば全区間が専用軌道(日本でいうフル規格新幹線)として整備されるアメリカ初の事例となる予定です。ただ、訴訟問題などによって2021年に予定されていた着工が延期され、一時はプロジェクトの中止も噂されていましたが、今年6月にテキサス州最高裁判所がテキサス新幹線計画の土地収容権を認めたため、今後の動向が注目されています。

まとめ

かつてはアメリカの都市間移動の主役だった都市間鉄道が衰退の一途を辿ってから半世紀以上が経過した今、世界規模で求められる地球温暖化対策や悪化する交通渋滞などを理由に、アメリカでも高速鉄道などの大量輸送交通の整備を求める声は、特にミレニアル世代において顕著であると言われています。

2023年に営業運転が開始されると北東回廊の最高速度を約260km/hまで引き上げる予定の新型アセラ
Image: Amtrak

しかし、長期に渡って車利用を前提に都市開発が進められてきたアメリカにおいて、巨額の整備コストや複雑な利権関係などが絡む高速鉄道整備へのハードルは非常に高く、当初の計画から大幅な規模縮小や中止に追い込まれるプロジェクトも多く存在するのが現状となっています。

2023年には民間初の準高速鉄道となる予定のブライトライン
Image: Brightline

一方で、来年にはブライトラインが延伸開業区間の一部で最高速度200km/h運転を開始する予定のほか、既存のアムトラック都市間列車の強化、カリフォルニア高速鉄道のセントラルバレー区間の開業が2030年までに予定されているなど、非常にゆっくりなペースでありながらも実現可能な範囲で着実に高速鉄道網を整備しつつあるのも事実です。

現在、北米で唯一専用軌道を走行する高速鉄道として建設が進むカリフォルニア高速鉄道のイメージ
Image: CHSRA / Justin Chechourka

そんな日本とは鉄道を取り巻く環境が全く異なるアメリカの高速鉄道整備構想が、これからどのような進化を遂げていくのか今後も注目していきます。

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