全米一の人口を抱えるカリフォルニア州では、サンフランシスコ、ロサンゼルス、サンディエゴ、サクラメントなど、州内の主要都市を最高時速320km以上の高速鉄道で結ぶ「カリフォルニア高速鉄道(California High-Speed Rail: CAHSR)」プロジェクトが進行中です。同プロジェクトはカリフォルニア州高速鉄道局(California High-Speed Rail Authority)が中心となって進められているもので、2008年には、最重要区間であるサンフランシスコ〜ロサンゼルス/アナハイム間の建設費の一部に州の税金を投じることを問う住民投票「Proposition 1A」が承認されました。
以降、幾度となく着工延期、計画変更、規模縮小などが繰り返されてきたCAHSRプロジェクトですが、現在、一部区間では着々と建設工事が進められています。今回は、そんなCAHSRプロジェクトについて調べてみたいと思います。第6回は、2033年の開業を目指しているベーカーズフィールド(Bakersfield)〜ロサンゼルス・アナハイム(Los Angeles/Anaheim)間のうち、ベーカーズフィールドからパームデール(Palmdale)までの進捗状況ついてさらに詳細を見ていきます。
ベーカーズフィールド〜パームデール間の概要
ベーカーズフィールド〜パームデール間は、ロサンゼルス・アナハイムまでの区間ととも2033年に開業予定の区間となります。またパームデールでは、ロサンゼルス近郊の通勤鉄道「メトロリンク(Metrolink)」、さらには将来的にはラスベガスとロサンゼルスなどを結ぶブライトライン・ウェストと接続する予定です。
建設ルートおよび整備方式
全区間を高速鉄道路線として整備
ベーカーズフィールドからパームデールまでの区間(約127km)の環境アセスメントはすでに終了しており、2021年8月に最終的な建設ルートなどが決定しています(Record of Decision: ROD)。この区間は、カリフォルニア高速鉄道建設区間の中で最も地形が複雑なエリアとなりますが、ほぼ全区間で時速320km以上に対応する予定です。
テハチャピ山地を越えるため総延長17kmのトンネルを建設
セントラルバレーとモハーヴェ砂漠を隔てるテハチャピ山地(Tehachapi Mountains)を越えるため、合計9つのトンネルが建設される予定で、ベーカーズフィールド〜パームデール間約127kmのうちトンネル区間はおよそ17kmとなります。
こちらはベーカーズフィールドからパームデールにかけての高低差を示した図です。この区間は、長い勾配区間となり600mほどの高低差があります。
ちなみに現在テハチャピ山地には、鉄道が峠を越えるための約1.15kmのテハチャピループ線(Tehachapi Loop)があることで有名です。アメリカの貨物列車は全長1km以上の編成となることも多く、ループ内で編成の前後が交差する景色は有名な観光スポットにもなっています。
駅の整備方法
パームデール駅
パームデール駅は、現在のアムトラックおよびメトロリンクのパームデール駅から少し南に下ったアベニューQ(Avenue Q)付近に建設されます。
CAHSRのパームデール駅では、メトロリンクへの乗り換えが可能となります。さらに、駅の北側にはラスベガス方面への高速鉄道路線「ブライトライン・ウェスト(Brightline West)」との分岐点が設置される予定で、当駅より北ではベイエリア方面とラスベガス方面とが分岐することとなります。
パームデール駅は通過線2線と島式ホーム2面4線(うち2線はラスベガス方面のブライトライン・ウェスト用)で整備されます。また、現在の駅から移転してくるメトロリンクのホーム1面2線も整備されるため、かなり大規模な鉄道駅となる予定です。
真上から見た駅のイメージです。駅の最終的な構造等については現在パームデール市などと協議が行われています。
現在検討されている案としては、橋上駅舎またはホーム下にコンコースが建設される案が検討されています。
現時点の駅完成イメージです(実際とは異なる可能性があります)。
進捗状況
2021年8月に環境アセスメントが完了し建設ルートが決定しているベーカーズフィールド〜パームデール間では、予算が確保でき次第すぐに着工できるよう基本設計作業などが進められています。
※1ドル=130円で計算
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