南カリフォルニアのサンバーナーディーノ郡交通局(San Bernardino County Transportation Authority: SBCTA)は、2022年の開通を目指してサンバーナーディーノ・トランジット・センター(San Bernardino Transit Center)とレッドランズ大学(University of Redlands)を結ぶおよそ14kmの新路線「アロー(Arrow)」の建設を進めています。同局は、アローの開業までにスイスのシュタッドラー・レール(Stadler Rail AG)の部分低床式鉄道車両ブランドである「FLIRT(Flinker Leichter Innovativer Regional-Triebzug)」を3編成導入する予定となっており、そのうちの第一編成がユタ州の工場からカリフォルニアに到着しました。
なお、FLIRT車両はヨーロッパなどで多く導入されている通勤車両で、北米では2019年に開業したダラス国際空港とフォートワースを結ぶTEXレールに導入されています。
サンバーナーディーノの車両基地に到着した新型車両
シュタッドラーの北米車両工場があるユタ州ソルトレークシティーから到着したFLIRT車両。渋いカラーリングのTEXレールと異なり明るめのカラーリングとなっています。
FLIRT車両の概要
運行者 | メトロリンク(Metrolink) ※車両保有者:サンバーナーディーノ郡交通局(San Bernardino County Transportation Authority: SBCTA) |
製造者 | シュタッドラー・レール(Stadler Rail AG) |
導入編成 | 3編成(2両連接編成+ 中間動力車) |
車両番号 | 3401〜3403 |
定員 | 236人(116席) |
営業開始 | 2022年〜 |
運行路線 | ARROW |
運行区間 | サンバーナーディーノ・トランジット・センター(San Bernardino Transit Center)駅〜レッドランズ大学(University of Redlands)駅 |
設計最高速度 | 79 mph(約130km/h) |
制御方式 | ディーゼル・エレクトリック方式(IGBT-VVVFインバータ制御) |
北米初となる燃料電池式ハイブリッド車両も登場予定
サンバーナーディーノ郡交通局は、アローのゼロエミッション化を目指すため、2019年に北米初となる水素をエネルギー源とした燃料電池式ハイブリッド車両1編成をシュタッドラー・レールに発注(4編成のオプション契約を含む)しました。この車両は「FLIRT H2」と呼ばれ、2024年に同線で運行開始する予定となっています。またこれに合わせて同交通局は、アローの車両基地に水素ステーションを設置するなど、燃料電池式ハイブリッド車両導入に向けた工事を2022年から開始する予定です。
今後、鉄道のゼロエミッション化を目指して、アメリカでも水素をエネルギー源とした鉄道車両の導入が加速していきそうです。
メトロリンクの新路線アローについて
レッドランズ旅客鉄道プロジェクト
メトロリンクが運行する新通勤路線となるアローは、「レッドランズ旅客鉄道プロジェクト(Redlands Passenger Rail Project)」と呼ばれ、サンバーナーディーノ郡交通局(San Bernardino County Transportation Authority: SBCTA)によって2019年に着工されました。プロジェクトの総工費は約3億6,000万ドル(約400億円)で、全長9マイル(約14.5km)の路線にサンバーナーディーノ・トランジット・センター(San Bernardino Transit Center)、ティッペカヌー(Tippecanoe)、エスリ(Esri)、レッドランズ・ダウンタン(Redlands Downtown)、レッドランズ大学(University of Redlands)の全5駅が設置されます。
なお、Esri駅は地理情報システム(Geographic information system: GIS)の世界的企業であるEsri(Environmental Systems Research Institute)のキャンパスの最寄駅となり、同社が駅の建設コストを負担しています。
運行ダイヤ
運行時間は朝5時から夜10時までで、平日のラッシュ時は30分間隔、それ以外は60分間隔で運行されます。なお、朝の通勤時間帯にはレッドランズからロサンゼルス方面、夕方の通勤時間帯にはロサンゼルスからレッドランズ方面への急行列車直通運転(既存のメトロリンク車両で運行)も実施される予定です。
Source: SBCTA
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