アメリカ西海岸を代表する都市の一つであるサンフランシスコは、一年を通して穏やかな気候に恵まれているカリフォルニア州北部に位置しており、世界屈指のIT企業の一大拠点「シリコンバレー」の中心都市であるのはもちろんのこと、世界的な金融都市としても有名です。また、ゴールデンゲートブリッジやチャイナタウンをはじめ、観光資源が豊富な都市としても知られています。そんな、ビジネス、観光を問わず世界中から多くの人々が訪れるサンフランシスコの空の玄関口「サンフランシスコ国際空港(San Francisco International Airport: SFO)」には、2003年からサンフランシスコ・ベイエリア高速鉄道公社(San Francisco Bay Area Rapid Transit District)が運行するバート(Bay Area Rapid Transit: BART)という都市高速鉄道が乗り入れています。
今回、サンフランシスコ国際空港に乗り入れているBARTに乗車する機会がありましたので、同空港の鉄道アクセスの速達性、経済性、利便性、快適性、安全性についてみていきたいと思います。
※情報は2023年10月時点のものです。各交通機関等の最新の情報は公式HPなどでご確認ください。
サンフランシスコ国際空港の位置・規模
サンフランシスコ国際空港はサンフランシスコのダウンタウンから20kmほど南に位置しており、2022年は年間約4,200万人(パンデミック前の2019年は年間約5,700万人)の人が利用しました。また、ユナイテッド航空およびアラスカ航空がハブ空港の一つとして使用しているほか、太平洋側に面していることから日本を含むアジア方面からのの国際線が充実していることが特徴となっています。
日本からのフライト
現在、日本からサンフランシスコ国際空港へは、羽田空港、成田空港、関西空港から合計9便もの直行便がほぼ毎日運航されており、所要時間はおおよそ9〜12時間程度となっています。以下は、2023年冬ダイヤ(10月29日〜2024年3月30日)における日本からサンフランシスコまでの直行便スケージュールです。
日本発サンフランシスコ国際空港(SFO)行き
航空会社 | 便名 | 出発空港 | 出発時刻 | 到着時刻 | 所要時間 | 運行日 | 機材 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
全日空 (ANA) | NH108 | 東京/羽田 (HND) | 22:55 | 15:20 | 9時間25分 | 毎日 | 77W |
全日空 (ANA) | NH8 | 東京/成田 (NRT) | 17:00 | 09:15 | 9時間15分 | 毎日 | 77W |
日本航空 (JAL) | JL2 | 東京/羽田 (HND) | 17:30 | 09:50 | 9時間20分 | 毎日 | 789 |
日本航空 (JAL) | JL58 | 東京/成田 (NRT) | 18:05 | 10:10 | 9時間5分 | 毎日 | 788 |
ユナイテッド航空 (United Airlines) | UA876 | 東京/羽田 (HND) | 16:25 | 09:00 | 9時間35分 | 毎日 | 772 |
ユナイテッド航空 (United Airlines) | UA838 | 東京/成田 (NRT) | 16:55 | 09:15 | 9時間20分 | 毎日 | 772 |
ユナイテッド航空 (United Airlines) | UA34 | 大阪/関西 (KIX) | 18:30 | 12:25 | 9時間55分 | 毎日 | 772 |
ジップエアー (ZIPAIR Tokyo) | ZG26 | 東京/成田 (NRT) | 21:30 | 13:40 | 9時間10分 | 月火水木金土 | 788 |
サンフランシスコ発日本行き
航空会社 | 便名 | 到着空港 | 出発時刻 | 到着時刻 | 所要時間 | 運行日 | 機材 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
全日空 (ANA) | NH107 | 東京/羽田 (HND) | 01:20 | 04:40+1 | 11時間20分 | 毎日 | 77W |
全日空 (ANA) | NH7 | 東京/成田 (NRT) | 12:00 | 15:20+1 | 11時間20分 | 毎日 | 77W |
日本航空 (Japan Airlines) | JL1 | 東京/羽田 (HND) | 13:50 | 17:20+1 | 11時間30分 | 毎日 | 789 |
日本航空 (Japan Airlines) | JL57 | 東京/成田 (NRT) | 13:05 | 16:20+1 | 11時間15分 | 毎日 | 788 |
ユナイテッド航空 (United Airlines) | UA875 | 東京/羽田 (HND) | 11:25 | 14:50+1 | 11時間25分 | 毎日 | 772 |
ユナイテッド航空 (United Airlines) | UA837 | 東京/成田 (NRT) | 11:50 | 15:10+1 | 11時間20分 | 毎日 | 772 |
ユナイテッド航空 (United Airlines) | UA35 | 大阪/関西 (KIX) | 11:05 | 16:25+1 | 12時間20分 | 毎日 | 772 |
ジップエアー (ZIPAIR Tokyo) | ZG25 | 東京/成田 (NRT) | 16:40 | 20:00+1 | 11時間20分 | 月火水木金土 | 788 |
サンフランシスコ国際空港へ乗り入れている鉄道路線
2023年10月現在、サンフランシスコ国際空港には、ベイエリア高速鉄道(Bay Area Rapid Transit: BART)のレッドラインおよびイエローラインの列車が乗り入れています。なお、ミルブレー駅ではカルトレイン(Caltrain)と接続しており、サンノゼ方面への鉄道アクセスも提供されていますが、ここでは省略します。
サンフランシスコ国際空港へ乗り入れている鉄道 | 路線 | 主な行先 |
---|---|---|
ベイエリア高速鉄道 (Bay Area Rapid Transit: BART) | レッド/イエローライン (Red/Yellow Line) | ダウンタウン (Downtown) オークランド (Oakland) アンティオッック (Antioch) リッチモンド (Richmond) ミルブレー (Millbrae) |
ベイエリア高速鉄道(BART)
サンフランシスコ・ベイエリアを走る都市高速鉄道「BART」は、1972年にオークランド近郊区間が先行開業したのを皮切りに、現在はサンフランシスコ、リッチモンド、ダブリン、アンティオック、サンノゼなどを結ぶ総延長200km以上におよぶ鉄道路線となっています。BARTのサンフランシスコ国際空港への乗り入れは2003年に実現しました。なお、サンフランシスコ市内では、サンフランシスコ市営鉄道(San Francisco Municipal Railway: Muni)が運行するライトレール路線やバス、観光の一部ともなっているケーブルカーなどに乗り換えることで、市内の主要観光地を気軽に訪れることが可能となっています。
速達性 ★★★★☆
BARTは高架または地下の専用軌道を走る都市高速鉄道路線のため定時運行※に優れており、最高速度110km/h程度(一部区間では130km/h)と比較的高速で走行することが可能です。そのため、ダウンタウンの主要目的地などへ向かう場合、渋滞による遅延が頻繁に発生する自動車と比べて所要時間の面で有利になるケースが多く、速達および定時性のメリットが期待できます。
※BARTでは、パンデミック以降の人手不足などにより頻繁に発生する列車の運休や遅延が問題となっていましたが、2023年4〜6月期におけるBARTの定時運行率は91%まで回復しています。
目的地の一例 | 最寄駅 | 所要時間* (鉄道) | 所要時間 (自動車) |
---|---|---|---|
ユニオンスクエア/ソーマ (Union Square / SoMa) | パウエルストリート (Powell St) | 約28分 | 20〜45分 |
フィッシャーマンズ・ワーフ (Fisherman’s Wharf) | ジェファーソンストリート・パウエルストリート** (Jefferson St & Powell St) | 約60分 | 22〜65分 |
チャイナタウン (Chinatown) | チャイナタウン・ローズパク*** (Chinatown – Rose Pak) | 約40分 | 20〜60分 |
**モンゴメリー(Montgomery)駅でF Market & Wharvesラインへ乗り換え
***パウエルストリート(Powell St)駅でMuni MetroのT Third Streetラインへ乗り換え
経済性 ★★★★★
サンフランシスコ国際空港からのダウンタウンまでの片道運賃は、UberやLyftなどを利用する場合は33〜44ドル(約5,000〜6,600円)くらいかかるのに対し、BARTを利用する場合は10ドル(約1,500円)となっており、物価が非常に高いことで有名なサンフランシスコにおいては、かなり経済的に移動することができる移動手段といえます。
目的地の一例 | 最寄駅 | 片道運賃 (鉄道) | 料金 (Uber/Lyft) |
---|---|---|---|
ユニオンスクエア/ソーマ (Union Square / SoMa ) | パウエルストリート (Powell St) | 10ドル | 33〜38ドル |
フィッシャーマンズ・ワーフ (Fisherman’s Wharf) | ジェファーソンストリート・パウエルストリート** (Jefferson St & Powell St) | 13ドル | 37〜44ドル |
チャイナタウン (Chinatown) | チャイナタウン・ローズパク*** (Chinatown – Rose Pak) | 13ドル | 35〜41ドル |
利便性 ★★★★☆
◉運転間隔
BARTのダウンタウン方面へ向かう列車は、平日は2〜10分間隔、土休日は8〜12分間隔で運転されているため、時刻表などを気にすることなく気軽に利用することができます。なお、国際線またはユナイテッド航空便を利用する場合はBARTの駅から歩いてアクセスできますが、国内線ターミナル1、2、3(ユナイテッド航空を除く)を利用する際は、エアトレイン(AirTrain)と呼ばれる24時間運行の無料自動運転シャトルで移動することになります。
◉運賃支払い方法
BARTに乗車するには、まず、駅に設置されている券売機でクリッパー(Clipper)と呼ばれるICカードを3ドルで購入するか、NFC対応のスマートフォンにあらかじめクリッパーカードを設定する必要があります。運賃は、ICカードまたはクリッパーカードを設定したスマートフォンに、券売機(各種クレジットカードおよび現金に対応)またはクリッパーアプリから事前チャージします(アプリでチャージした場合はチャージ額が反映されるのに時間がかかるので注意が必要)。事前チャージを済ませたあとは、自動改札機のICカードリーダーにクリッパーカードまたはスマートフォンをタッチすることで改札機を通ることができます。なお、2023年10月時点において、クレジットカードでのタッチ決済には対応していませんが、2024年夏頃を目処に対応する予定となっています。
利便性 | 対応状況 | 詳細 |
---|---|---|
高頻度運転 | 平 日:◎ 土休日:◎ | 平 日(4:57-0:00):2〜10分間隔 土休日(5:47-0:00):8〜12分間隔 |
ICカード | ◯ | クリッパー(Clipper) |
モバイルチケット | ◯ | Clipperアプリ (Apple・Android端末に対応) |
クレジットカードタッチ決済 | × | 2024年夏頃対応予定 |
快適性 ★★★★☆
BARTの全路線では、2018年からボンバルディア(現アルストム)製の新しい車両の運行が開始され、2023年9月11日以降、基本的に全ての定期列車が新型車両で運行されるようになりました。新型車両は、車両とホームの段差は最小限に抑えられているため、大型荷物などを持っていてもスムーズに乗車することができるほか、車内には大型荷物や自転車用のスペースがあり、車内WiFIも利用可能となっています。なお、一般の都市鉄道のため座席指定などのサービスは提供されていません。
車両の快適設備 | 対応状況 | 詳細 |
---|---|---|
駅のバリアフリー | ◯ | 全駅にエレベーターを設置済み |
車両のバリアフリー | ◯ | 大型荷物スペースおよび車椅子用スペースあり |
座席指定サービス | × | |
充電用USBポート | × | |
車内WiFi | ◯ | 一部トンネル区間では接続が不安定 |
トイレ | × | |
情報提供ディスプレイ | ◯ | LCDディスプレイ+LED式 |
日本語案内 | × |
安全性 日中★★★★☆/夜間早朝★☆☆☆☆
サンフランシスコはアメリカの大都市としては珍しく公共交通機関が発達しているため、他のアメリカの都市のように低所得者層の人たちだけでなく、多くの通勤客や観光客などもBARTを利用します。しかしながら、パンデミック以降、ホームレスの問題の深刻化していることや、リモートワークの普及などによって通勤利用者が減ったため、犯罪件数の増加が懸念されています。そのため、これはアメリカの公共交通機関全般に言えることですが、土地勘がなく最寄駅から目的地までの距離が遠い場合や、利用者が少なくなる早朝や夜間における利用はおすすめしません。
安全設備 | 対応状況 | 詳細 |
---|---|---|
車内監視カメラ | ◯ | 全車両に設置済み |
車内乗務員 | △ | 運転手のみ |
駅常駐スタッフ | △ | 時間帯による |
まとめ
今回はサンフランシスコ・ベイエリアの空の玄関口であるサンフランシスコ国際空港の鉄道アクセスについて紹介しましたがいかがでしたでしょうか?サンフランシスコは、アメリカの大都市としては珍しく公共交通が発達した都市となっており、全米屈指の利便性を誇る空港アクセス鉄道が整備されています。また市内では、ライトレールおよびバス路線を運行するMuni、ケーブルカーなどの公共交通機関を上手に組み合わせることで、車なしで市内の主要観光地を訪れることが可能となっています。皆さんも、サンフランシスコに訪れる機会があれば、早朝や夜間の利用はなるべく避けるなどの安全対策を講じた上で、サンフランシスコの公共交通機関を上手に活用してみてはいかがでしょうか。
※1米ドル=149円で計算。
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